しかし、その立場にいる人間が、商業的な利益を完全に無視できる人が何人いるだろうか?
ただ、張本義彦はそんなことを口に出すことはできなかった。
自分の心の中だけで分かっていた、彼もやはり見た目で判断してしまったのだ!
「現在の状況は、ローズちゃんが石ちゃんに1票リードしています!たった1票差!第三の審査員の紺野広幸さんはどうしますか?」
紺野広幸は躊躇なく全ての票を時枝秋に投じた!
「また先ほどの状況に戻り、石ちゃんが19票リードです!」司会者は興奮して叫んだ。試合が白熱すればするほど、視聴率も上がるのは当然だ。
観客も沸き立った。
このような展開に、皆は大いに盛り上がった!
三人の審査員が投票を終えた後、時枝秋のリードは19票だけになった!
現在、安藤誠だけがまだ投票していない。
紺野広幸は少し息を吐き、まさか最後は安藤誠が勝負を決めることになるとは思わなかった!
明らかに、安藤誠の持つ票は、皆の最後の希望となった。
文岩薫里はついに笑顔を見せた。
安藤誠が彼女をどれほど気に入っているかは、誰の目にも明らかだった。
しかも、安藤誠は小林凌の代わりに彼女のグループの審査員となり、同じグループの関係にある。情理を尽くしても、安藤誠は全ての票を彼女に投じるべきだった。
最後の20票は、ほとんど結果は見えていた。
木村裕貴は拳を握りしめ、軽く咳をして、声が少しかすれているのを感じた。
時枝秋のファンは何かを感じ取ったようで、会場のファンは全員手を挙げて「石ちゃん!石ちゃん!石ちゃん!」と叫んだ。
時枝秋は澄んだ瞳でマスク越しに皆を見渡し、落ち着いた様子を見せた。
画面の前の視聴者もコメント欄で「石ちゃん!絶対石ちゃん!石ちゃんが一番すごい!」と連打せずにはいられなかった。
ローズちゃんのファンは不満そうに「なんで!?ローズちゃんが一番すごいじゃない!」
「石ちゃんは創作力が多彩で、歌唱力も素晴らしい、このチャンピオンにふさわしい!」
「石ちゃんはあんなに醜いから、これからステージに立つと人を驚かせちゃうよ!大会が終わったら裏方に回ったほうがいいんじゃない?」
「そうだよ、裏方に回れよ!」
「顔しか見ない馬鹿豚め!」
「焦ってる焦ってる、顔も見せられない石ちゃんの脳足りんファン!」
双方が激しく言い争った。