ボディーガードは彼女が藤原修に近づく機会を与えるはずがなかった。
藤原修は時枝秋に低い声で尋ねた。「さっき、何味が飲みたいって言ってた?」
「あなたと同じでいいわ」と時枝秋は言った。「先に並んでて。私、ちょっとトイレに行ってくるわ」
彼女はトイレに入り、かつらを外し、顔のメイクを拭き取ってから、ゆっくりと木村雨音の方へ歩いていった。
木村雨音はもう絶望していた。今や藤原修さえも助けてくれず、もう行き場がなかった。
岡元経理の部下たちはすぐに彼女を見つけ出し、連れ戻すだろう。彼女が自ら署名した契約は、彼女をゴールデンエンタメに、そして岡元経理の側に縛り付けていた。
時枝秋は彼女の絶望を目撃するためにやって来たのだ。
前世で、自分が最も絶望していた時に、木村雨音が傍らに立って冷ややかに嘲笑っていたように。