もし視線が実体を持っていたら、時枝秋は今、大勢のファンに囲まれて身動きが取れなくなっていただろう。
男子生徒たちは見ながら小声で話し合い、中には顔を赤らめ、近寄りたいのに躊躇している者もいた。
授業のチャイムはまだ鳴っていなかったが、篠崎正秀は早めに来ていた。
他のクラスの生徒たちは篠崎正秀を見るとすぐに散り散りになった。
5組の生徒たちは時枝秋を夢中で見ていたが、篠崎正秀が早めに現れたのを見て、思わずため息をつき、机を叩いて不満を表した。
「はいはい、10分余計に使ったところで何だというんだ?10分あれば問題を10点分多く解けるかもしれないぞ!座りなさい、座りなさい!」
篠崎正秀は机を叩きながら、最後列の時枝秋を見て、やっとこれらの生徒たちが騒いでいる原因に気付いた。
彼はすぐに顔を曇らせた:「時枝、自分が何をしているのか分かっているのか?」