藤原修は片足を曲げ、もう片方を平らに伸ばしたまま、光に触れた時、ようやく重たい瞼を開けた。目が慣れてから、彼は瞳を開き、光の方を見た。
死のように静かで波一つない彼の眼差しは、時枝秋を見た時になってようやく光を放った。
しかし、その光はほんの一瞬で消え、すぐに静寂に戻った。まるで夢の中で一瞬の希望を見たものの、それが夢だと気づき、再び絶望に戻ったかのようだった。
時枝秋はゆっくりと彼の側に歩み寄り、膝をつき、彼の首に腕を回して、小声で言った。「あなた。」
彼女の抱擁は確かな実体があった。
温かく、彼女特有の清楚な蘭の香りを漂わせていた。
藤原修が指を動かすと、時枝秋の指がそれを包み込むように握った。
それによって藤原修は、これが夢ではないと実感した。
「私、まだ夕食を食べてないの。一緒に行きましょう」と時枝秋は柔らかな声で言った。
「ああ」落ち込んでいた男は直ちに立ち上がり、ついでに少女を抱き上げた。床が冷たいので、彼女をそのままにしておくわけにはいかなかった。
彼は明らかに生気を取り戻し、手を伸ばして電気をつけ、スーツの上着を手に取り、ついでにネクタイを整えようとした。
少女は彼より先に、指先でネクタイを整え、乱れを直し、それから目を伏せ、真剣に集中して彼のネクタイを結び直した。
ネクタイがきちんと結び直されると、彼女の唇端に満足げな笑みが浮かび、顔を上げて藤原修を見た。
藤原修は思わず目を逸らすことができず、まるで雲の上を歩いているかのように軽やかな気分になり、心の奥が柳の綿毛でそっと撫でられたような感覚を覚えた。
藤原修は完全に元気を取り戻し、顔には健康的な血色が戻り、少し乱れた前髪も凛とした雰囲気を醸し出していた。
彼が時枝秋の手を取って出てきた時、園田一帆は驚きのあまり口が卵一個丸々入りそうなほど開いていた。
時枝秋が入ってから出てくるまで、たかだか10分ほどだったのに。
藤原様の精神状態がどうしてこんなにも急に回復できたのだろう?
彼の傍を通り過ぎる時、藤原修は目配せで伝えた。「早めに帰っていいぞ」
親しみやすく、温和で、春風のように心地よい!藤原様が別人のようだった!