第206話 手口が上手すぎる

文岩薫里の表情が一瞬こわばった。

時枝秋は人の足を引っ張るような人間ではなかった。

しかし、今日の文岩薫里の態度は、前世の多くの出来事を思い出させた。

前世の文岩薫里も、チャンピオンの座まで上り詰め、注目度も人気も非常に高く、大会終了後、小林凌とファンが熱狂する芸能界のカップルを結成し、ファンからは花道夫婦と呼ばれていた。

ローズちゃんはバラの花を、小林凌は蘭を代表し、二人は花々夫婦とも呼ばれ、ファンは二人が一緒に花道を歩むことを願っていた。

花道夫婦は理論上、注目度も人気もあり、評判も高く、芸能界で無敵の存在で、ライバルは全くいなかった。

しかし、そんな二人でさえ、すでに塵の中にいた時枝秋の上に立って吸血し、時折時枝秋が小林凌を好きだった件を蒸し返し、それによって二人の愛情の深さと揺るぎなさを証明しようとした。