第206話 手口が上手すぎる

文岩薫里の表情が一瞬こわばった。

時枝秋は人の足を引っ張るような人間ではなかった。

しかし、今日の文岩薫里の態度は、前世の多くの出来事を思い出させた。

前世の文岩薫里も、チャンピオンの座まで上り詰め、注目度も人気も非常に高く、大会終了後、小林凌とファンが熱狂する芸能界のカップルを結成し、ファンからは花道夫婦と呼ばれていた。

ローズちゃんはバラの花を、小林凌は蘭を代表し、二人は花々夫婦とも呼ばれ、ファンは二人が一緒に花道を歩むことを願っていた。

花道夫婦は理論上、注目度も人気もあり、評判も高く、芸能界で無敵の存在で、ライバルは全くいなかった。

しかし、そんな二人でさえ、すでに塵の中にいた時枝秋の上に立って吸血し、時折時枝秋が小林凌を好きだった件を蒸し返し、それによって二人の愛情の深さと揺るぎなさを証明しようとした。

時枝秋を利用してファンを虐め、固定ファンを作る手法は実に巧妙だった。

後に二人のカップル関係は終わりを迎え、文岩薫里は話題作りの最後の利益を得るため、小林凌との関係解消後、できる限りファンを自分の方に引き寄せようとし、さらには時枝秋が二人の住居に夜這いして告白したと中傷し、自分は時枝秋の小林凌への執拗な追求に耐えられず、涙を呑んで三人の競争から身を引いたと主張した。

明らかにすべての出来事は彼ら自身が仕組んだものなのに、その時すでに悪名高かった時枝秋に、彼らはさらに追い打ちをかけ、彼らが話題作りで得た利益の後に残されたすべてのゴミを時枝秋に背負わせた。

この世に生まれ変わって、時枝秋は最初、自分が小林凌と関わらなければ、文岩薫里とも大きな関わりは持たないだろうと思っていたので、ずっと文岩薫里にあまり注意を払っていなかった。

今考えると、ある出来事の軌跡は、人力では変えられないものなのだ。

たとえ自分が小林凌と関係なくなり、小林凌と文岩薫里が花道夫婦を結成しなくなっても、文岩薫里はまた近づいてくる。

彼女が近づいてくるなら、時枝秋は前世で彼女に踏みつけられた恨みを思い出し、感情が掻き立てられた。

それなら来い、戦おう!