時が来ると、彼女は自分の名前を聞き、マイクを手に取り、ステージに向かって歩き出した。
客席から轟くような声が響いた。「時枝秋!時枝秋!時枝秋!」
時枝秋は唇を緩め、スポットライトが彼女に当たった瞬間、客席はさらに沸き立った。
彼女はリズムを合わせて、歌い始めた。
高らかで明るい声が空気を切り裂くように響き渡った。
心地よい声が一人一人の耳に届き、電気が走るようなしびれを感じさせた。
ファンの熱気が高まり、両手を振りながら一緒に歌い始めた。
歌うというより、大声で叫んでいるといった方が正確だった。
時枝秋は客席のライトの中で振られる無数の手を見つめ、その眼差しはますます確固として落ち着いたものになっていった。
客席には万を下らない人々がいたが、彼女は突然、見覚えのある視線が真剣に自分を見つめているのを感じた。
時枝秋は無意識にその方向を見やったが、乱れ飛ぶライトと人影の中で、誰がそこに立っているのか見分けることはできなかった。
しかし、彼女の心は誰かを感じ取っていた。まるでそこに誰が立っているのかを知っているかのように。
彼女の視線はそこに留まり続けた。
強烈なリズミカルな音楽が止み、優しいラブソングへと移行した。
時枝秋はマイクを手に取り、かすかな余韻を帯びた声で、まるで人の心を掻き乱すかのように歌い始めた。
「あなたは私に尋ねる、愛の深さを
私の愛はどれほどなのかと……」
客席の喧騒も静まり、皆が彼女に合わせて静かに歌った。
ライトは優しく温かく、まるで春の午後の陽光のように、この世界に降り注いでいた。
時枝秋はついに見つけた。最前列に、藤原修が静かに立っていた。ライトが明滅する中、彼の整った顔立ちに明暗の陰影を描いていた。
彼は背筋を伸ばして立ち、群衆の中で際立って目立っていたが、周りがどれほど騒いでも歌っても、誰も彼に影響を与えることはできなかった。
彼の表情は穏やかだったが、目には熱い想いを秘め、ステージ上の人を一瞬も目を離さずに見つめていた。
ついに時枝秋と目が合った時、彼の唇の端が抑えきれないように上がった。
時枝秋も笑顔を見せた。普段は冷たさだけを帯びた薄紅の唇が、今は弧を描き、目尻の長いアイラインまでもが曲線を描いているかのように、魅惑的だった。