第285章 言い難い苦悩

「斎藤さん、会社はこれまで大変な思いをしてきましたよ。時枝秋への契約金があまりにも高額すぎて、無駄になる可能性が高いですよ!」

「斎藤さん、今なら後悔しても間に合います!初期費用だけ損失として、契約を解除しましょう!」

斎藤心美は、もうどうやってこの人たちを説得すればいいのか分からなくなっていた。時枝秋の成績を見せても駄目なのか?

なぜみんな時枝秋に偏見を持っているのだろう?

みんながわいわい騒ぐ中、斎藤心美の声はかき消されそうになっていた。

祖父が病気になってから、斎藤心美は家業を引き継いだが、彼女が何をしても、幹部たちは反対の声ばかりだった。

以前は唐沢勇を筆頭に、今は唐沢勇が退職しても、依然として同じような声が続いていた。

この人たちは彼女に反対することに慣れてしまったようで、彼女が何をしてもそうだった。

時には本当に、自分の決定が本当に悪いのか、それともただ単に若い女性だからという理由で、本能的に彼女のどんな決定も信用しないのか、区別がつかなくなることがあった!

斎藤心美は突然立ち上がった。「もう静かにしてくれませんか?時枝秋のマネージャーが送ってきた成績表さえ信じられないなんて、一体何を信じられるというんですか?」

みんなは黙ったが、その目は傲慢さを隠せていなかった。

これらの幹部はほとんどが男性で、彼らの心の中では、男性こそが会社や国家、さらには世界の支配者だと考えていた。

斎藤心美が会社を経営してから多くの成果を上げても、彼らにとってはそれは単なる偶然か、以前の成果の上に積み重ねただけのことだと思われていた。

彼女の本当の実力によるものではないと。

「みなさんから特に意見が出ないようなので、すべて私の言った通りに進めましょう」と斎藤心美は言った。

下から誰かがぽつりと口を開いた。「では、みんなのKPIはどう評価するんですか?斎藤さんが良くない先例を作って、みんなで一緒に損失を負担するということにはならないでしょうね?」

「そうですね、それは少し公平じゃないですよね?」

これは斎藤心美に決定を変えさせようとする圧力だった。

斎藤心美は一度目を閉じ、ゆっくりと開いた。「では、損益は私一人で責任を持ちます」

そうなれば、みんなも特に意見はなかった。結局、自分たちの取り分が減らないならそれでよかったのだ。