第285章 言い難い苦悩

「斎藤さん、会社はこれまで大変な思いをしてきましたよ。時枝秋への契約金があまりにも高額すぎて、無駄になる可能性が高いですよ!」

「斎藤さん、今なら後悔しても間に合います!初期費用だけ損失として、契約を解除しましょう!」

斎藤心美は、もうどうやってこの人たちを説得すればいいのか分からなくなっていた。時枝秋の成績を見せても駄目なのか?

なぜみんな時枝秋に偏見を持っているのだろう?

みんながわいわい騒ぐ中、斎藤心美の声はかき消されそうになっていた。

祖父が病気になってから、斎藤心美は家業を引き継いだが、彼女が何をしても、幹部たちは反対の声ばかりだった。

以前は唐沢勇を筆頭に、今は唐沢勇が退職しても、依然として同じような声が続いていた。

この人たちは彼女に反対することに慣れてしまったようで、彼女が何をしてもそうだった。