第332章 彼女が妹だからね?

時枝秋は目を開け、笑顔で顔を上げ、彼の唇に近づいた。

時枝秋が寝たふりをしていただけとは思わなかった藤原修は、瞳に驚きが浮かんだが、彼女にキスされると、すぐに目に笑みが宿った。

藤原修は腕を伸ばし、彼女を抱きしめて自分の胸に引き寄せ、キスを深めた。

しばらくして、時枝秋はようやく彼の腕の中で息をつく余裕を見つけた。

「今日はどうしてこんなに時間があるの?」藤原修は彼女の髪を撫でながら尋ねた。

「会いたくなったの」時枝秋は真剣に言った。結婚指輪の日付を見て、彼に会いに来たいという思いが湧き上がったのだ。

彼に会えてこそ、心の中でずっと渦巻いていた感情がようやく落ち着くのだった。

その言葉は藤原修を喜ばせ、目尻や眉までもが笑みに染まった。

彼は手のひらを彼女の首筋に置いた。「今度忙しい時は、会いたくなったら言ってくれ」

自分から会いに行くと。

そうすれば時枝秋は忙しい仕事の合間を縫って往復する必要がなくなる。

時枝秋はこの男性の抑制された感情や、静かな優しさを思い出し、キスで答えた。

……

横澤蕾は仕方なく、時枝雪穂に助けを求めることにした。

時枝雪穂は以前、堀口景介とかなり友好的な関係を示していた。横澤蕾はそれを信じ、彼女と堀口正章の関係も良好だと信じていた。

横澤蕾は続けて二回訪ねたが、いずれも空振りに終わった。

彼女は時枝雪穂に電話をかけるしかなかった。

時枝雪穂は横澤蕾を避けることはできても、電話は無視できなかった。

この時、後悔していたのは横澤蕾と小林凌だけではなかった。

時枝雪穂自身も後悔していた。

堀口正章が当時からこれほど輝かしい成績を持っていたとは、まったく想像していなかった。幼い頃、彼女も堀口正章の試合を見ていた。

あの頃は、誰もが彼のことを好きだった。

尾張お爺さんもよく堀口正章の試合を見ていた。

しかし、誰一人として彼女に、あの堀口正章が彼女の二番目の兄、堀口正章だとは教えてくれなかった。

もし早く知っていれば、尾張家とあんなに決定的に決裂することはなかったはずだ。

なんと尾張家の者は全員、自分を騙していた!自分を警戒していた!

これほど長い間、彼らは自分を人間として扱っていなかったのだ!

時枝雪穂の心には限りない後悔と、言い表せない憎しみが渦巻いていた。