第350章 自分の実力で

思いがけず、龍崎雄が直接口を開いて、このように物事を決めてしまった。

葉山彩未は今日、マネージャーもアシスタントも連れてこなかったのに、まずは概要を話し合ってからと言っていたのに。

「では、龍崎プロデューサー、ありがとうございます」葉山彩未は驚きながらも、すぐに言った。

「よろしくお願いします」龍崎雄は手を差し出して、「後で監督を紹介しましょう。時枝さん、脚本の主な内容を葉山先生と話してください」

「はい」時枝秋は応じて、葉山彩未を連れて外に向かった。

葉山彩未は外に出てから、小声で時枝秋に尋ねた:「龍崎プロデューサーはいつもこんなに話しやすい方なんですか?」

「まあ、そんな感じですね」時枝秋は軽く頷いた。

葉山彩未は返事をしたが、噂では龍崎雄はそんなに接しやすい人ではないはずだ。おそらく時枝秋のおかげで、自分も恩恵を受けているのだろう。

「今回私は歌手として小さな役でカメオ出演します。大まかなストーリーはこんな感じで…」時枝秋は簡単に説明した。

彼女は葉山彩未と、歩きながら話をして、外へ向かった。

多くのスタッフが時枝秋に挨拶をした。

黄瀬桂子は向こうで衣装合わせの写真を撮っていて、こちらに視線を向けた時、素早く目をそらした。

心の中で少し疑問に思った。スタッフたちはみんな時枝秋を知っているようだが、なぜだろう?

「葉山先生、これは私が『三十歳』のために書いたインサート曲です。見ていただけますか?もしよろしければ、このインサート曲も歌っていただきたいのですが」

葉山彩未は時枝秋の作曲能力を知っていたので、譜面を受け取って一目見ただけで感動した:「このメロディー…素晴らしすぎます。時枝さん、本当に素晴らしい曲を書かれましたね」

「使っていただけるかどうかが大事ですから」

「とても良いですよ。主題歌を書き終えたら、また一緒に相談させてください」

時枝秋は頷いて笑った:「はい」

黄瀬桂子は衣装合わせの写真を撮り終えて、龍崎雄と一緒に食事でもしようと思った。

現在、龍崎雄の制作現場では、彼は監督以上の発言権を持つ存在だった。

彼が昌河プロダクションの社長であることに加えて、各方面での能力が非常に優れていて、監督でさえ彼に一目置いているからだ。