園田保夫は自分のピアノを指さした。
時枝秋は席に座り、軽く二音を試し弾きした。ピアノの音色は古風で優れており、確かに上質なピアノだった。
彼女は手慣れた様子でショパンの曲を一曲弾いた。
曲が流れ出すと、園田保夫の予想通りの演奏で、彼は目を閉じて細かく感じ取り、その後、時枝秋に一、二箇所アドバイスをした。
「なるほど、そうすればより良い音色が出せるんですね…」時枝秋は今まで専門的な訓練を受けたことがなく、すべて独学で熱意だけで続けてきた。
彼にこうして指導されると、なんとも爽快な気分になった。
彼女は音楽への理解力が非常に高く、以前は作詞作曲の時にピアノを補助として使用していただけだったが、今になって本当にプロフェッショナルな態度で取り組むことの違いを実感した。
園田保夫の指示に従って、もう一度練習した。