第349章 美しさ以外に、何があるの?

葉山彩未は彼女のこのような淡々とした性格に感心していた。

今の芸能界では毎日激しい争いが繰り広げられ、他のアーティストは多かれ少なかれ心理的なプレッシャーを感じている。彼女が見てきた人も少なくない。時枝秋のように淡々と透明で自由に生きているアーティストは、本当に稀少だった。

「葉山先生、あなたのバラエティ番組はいつ撮影するんですか?」

「明日よ。わざと一日早く来たの。あなたと食事をしながら話したかったから。」

「では、私と一緒に『三十歳』の撮影現場を見に行くのは構いませんか?」と時枝秋が尋ねた。

「もちろん。私がそのテーマソングを歌うことになるんでしょう?」

「そうです。」

葉山彩未はすぐに興味を示した。「龍崎プロデューサーのドラマなら、間違いないわ。実は、龍崎プロデューサーのドラマのおかげで、バラエティ番組に出演するチャンスをもらえたんです。」

「どういうことですか?」時枝秋は興味深そうに尋ねた。

「私たちのバラエティ番組は『私たちの生活』って言って、新しく立ち上げたスローライフ系の番組なんです。様々な年齢層のアーティストに自分の生活スタイルを紹介してもらう内容です。元々私のポジションは黄瀬桂子のものだったんです。でも黄瀬桂子が『三十歳』のヒロインを引き受けたので、空いたポジションに私が急遽呼ばれたんです。」

時枝秋は『三十歳』のキャスティングに関わっていなかったので、龍崎プロデューサーが黄瀬桂子を選んだことを知らなかった。

この名前は、ここ数日頻繁に出てくるようになっていた。

しかし、龍崎雄の方でヒロインが決まったのなら、時枝秋は特に何も言うことはなかった。

実際、このようなドラマでヒロインを決めるのは、むしろ難しい。

今や四十歳に近づいている一線級二線級の女優たちは、アイドルドラマで回り続けることを望み、このような結婚出産、家庭の日常を描くドラマには出たがらない。自分たちの格や今後のファッション関連の仕事に影響が出ることを恐れているのだ。

他の女優たちも同様で、一度母親役を演じたら、その後もずっと母親役ばかりになることを恐れている。

このようなドラマは、実力派の俳優の中から選ぶしかない。