香りは上品で淡く、少し懐かしい感じがして、まさに季山勝洋が育てていた鉢植えの花々の香りだった。
彼はその鉢植えを2、3ヶ月育てており、すでに愛着が湧いていた。今その香りを嗅ぐと、気持ちが自然と違ってくる。
「珍しいね」彼は贈り物を受け取りながら言った。それが物珍しいのか、この少年が珍しいのか、どちらとも取れる言い方だった。
言野悠人は二人にお茶を注ぎながら、季山勝洋に言った。「季山監督、この日の出のシーンが撮れないなら、本当に特殊効果でしか監督の求める効果は出せないかもしれませんね」
「日の出はまだいい方だよ」季山勝洋はお茶を一口飲み、テーブルの上にある瓢箪の形をした物を手に取った。「難しいのはこの塤の音だ。どうやら合成するしかないようだね」
言野悠人は時枝秋が見ていることに気づき、説明した。「これは子母塤という、とても古い楽器です。塤は習得は簡単ですが、極めるのは難しい。私たちの映画には塤の音楽を使うシーンがあります。季山監督は子母塤を演奏に使いたいと考えています。塤を吹ける人は多いですが、子母塤を吹ける人となると、そう多くはないんです」