「何か問題でも?」メイクアップアーティストはそんなに長々と話した後、時枝秋が質問したときの口調が冷たかったことに気づいた。
時枝秋は彼女を見て言った。「このファンデーションはとても良いと思うんだけど、私にくれない?」
「いいわよ、もちろん。メイクが終わったらあげるわ。」
「いいえ、新品が欲しいの。私のを使ってください。」
傍にいた木村裕貴は急いで時枝秋の化粧品一式をブラシやパフと一緒に持ってきた。
メイクアップアーティストの表情が少し変わった。
木村裕貴は説明した。「先生、気にしないでください。時枝秋はあなたの物が悪いと言っているわけではなくて、季節の変わり目に肌がちょっとアレルギー反応を起こすので、他人の物を使うのを避けているんです。」
メイクアップアーティストは納得した。「そうなんですね、それなら私が軽率でした。」
メイクアップアーティストは時枝秋の物を使い始め、その間に木村裕貴が水を持ってきて時枝秋に飲ませた。
時枝秋は飲み終わると、そのまま台の上に置いたが、きちんと蓋をしなかったため、菊花茶が全部メイクアップアーティストのブラシの列にこぼれてしまった。
「先生、申し訳ありません。」時枝秋は急いで姿勢を正した。
木村裕貴が片付けに来た。
「大丈夫です、ブラシは洗えばいいだけですから。」
「それはいけません。木村さん、先生に新しいブラシセットを弁償してください。」
メイクアップアーティストは急いで辞退した。
しかし時枝秋は弁償すると主張した。「そうしないと、あなたがくれるファンデーションも受け取りません。」
メイクアップアーティストは時枝秋に押し切られ、仕方なく弁償を受け入れた。弁償を受けたからには、古いブラシセットはもう要らなくなり、その場でゴミ箱に捨てた。
メイクアップアーティストがメイクを終えて去った後、木村裕貴は小声で緊張した様子で尋ねた。「時枝秋、彼女の化粧品に問題があったの?」
時枝秋はちょうど自分が持ってきた金針を取り出して試してみたが、金針の色は変わらなかった。
「ファンデーションには問題なかったけど、彼女が使っていたファンデーションブラシに問題があった。彼女の問題ではなく、他の人のものだと思う。」
木村裕貴はとても心配し、彼女の前の化粧台を全部もう一度チェックした。