しかし、彼は以前にも賞を取っていたのではないですか?
彼の心構えに助手も安心した。
しかし、助手はやはり時枝秋に電話をかけた。
時枝秋が電話を受けたとき、藤原修は彼女のそばにいた。
彼女はスピーカーフォンにして、助手の話と堀口正章の態度を、藤原修にもすべて聞かせた。
電話を切った後、藤原修は尋ねた。「このチャンピオンは重要なの?」
「うん、海外のファッション界ではこの賞をかなり重視しているの。もし受賞できれば、兄さんが今向こうで築いている市場の安定に大いに役立つわ」
「何か考えはある?」
「兄さんの考えは正しいと思う。自分を貫いて、裏で審査員と取引するようなことはしなくていい。でも染宮静里奈がこんなことをするなんて、彼にとってはかなりのプレッシャーよね」
「私には良い方法がある」と藤原修は言った。
時枝秋の目が星のように輝いた。「聞かせて」
藤原修が話し終えると、彼女は思わず笑みを浮かべた。「さすが藤原グループがこれほど大きくなって、多くの業界でトップに立っているわけね。藤原修、あなたの心はどうやってできているの?」
……
国際ファッションショーのコンテストが正式に始まった。
小林凌の精力的な宣伝のおかげで、今では広く知られるようになっていた。
みんな知っていた。五十嵐博己がデザイナーコンテストに参加するだけでなく、小林凌と染宮琴音も彼のメインモデルとしてステージに立つことを。
時枝秋がステージに立つというニュースも、もはや秘密ではなかった。
彼女が以前ステージに立った動画も、多くの人が見惚れ、この日を心待ちにしていた。
五十嵐博己はハーフだが、S国籍で、堀口正章と同じ国の人間として、二人とも大きな注目を集めていた。
一般の人々はファッション界やモデル界などに興味がなくても、このコンテストが外国人との競争だと聞くと、大きな国家的誇りを感じていた。
あっという間に、五十嵐博己と小林凌を応援するグループと、堀口正章と時枝秋を応援するグループに分かれ、コンテストが始まる前から、支持者たちは自分たちの立場を明確にしていた。
コンテスト当日。
会場の5人の審査員は最前列に座っていた。
超VIP席の最も視界の良い場所には、ファッション界の大物たちが来場していた。
しかし、最も良い席に誰が座っているのか、誰も知らなかった。