その後、彼女は窓の外を横目で見つめ、複雑な表情を浮かべながら、しばらくしてようやくゆっくりと口を開いた。「愛しているかどうかなんて、もはやどうでもいいわ。起きてしまったことは取り返しがつかないし、今の状況も変えられないもの」
熊谷玲子は青木岑の声から深い憂いを感じ取り、友人として彼女のことが心配になった。
「岑、私たちが高校生の頃、あなたと西尾聡雄が付き合い始めた時、この世界におとぎ話は本当にあるんだって信じたわ。二人とも素晴らしい人だったのに、どうしてこんな風になってしまったの?本当に残念だわ。怒らないで聞いてほしいんだけど、私はあの寺田徹があなたにふさわしくないと思うの。だって、あの頃の学校であなたは…」
熊谷玲子の言葉は途中で、青木岑に遮られた…
「玲子、もういいの。過去は過去よ。私が西尾聡雄にどんな気持ちを持っていても、もう二度と一緒になることはできないわ。あなたも知っているでしょう。七年前のあの出来事が私にどれほどの打撃を与えたか。私は全てを失ったのよ。これ以上悲惨なことがあるかしら?あの時死んでいたのが私だったらよかったのに」