「ふふ、説明?何を説明することがあるのかな」寺田徹は嘲笑うような表情を浮かべ、その冷たい態度に青木岑は非常に不快感を覚えた。
まるで、三年間付き合ってきた優しく思いやりのある寺田徹ではないみたいだった。
一夜にして、こんなにも変わってしまうなんて……
「徹、私たち三年も一緒にいたのに、私のことを分かってくれないの?」
寺田徹は顔を上げ、青木岑の顔を見つめながら笑った。「本当に君のことを分かっていなかったよ、青木美人様。昨夜のことがなければ、君を純粋な仙女だと思い込んで、大切に扱っていたところだ。でも……私の心の中の美人様は、七年前に男に……寝取られていたなんて。その時、君は何歳だった?18歳にもなってなかったんじゃないか?青木岑、今になって分かったよ。君はそんなに恥知らずだったんだね。なるほど、なぜ君が私と付き合ってくれたのか。つまり、私は他人の使い古しの——破れ靴を拾ったわけだ。」
「破れ靴」という言葉を、寺田徹は特に強調して……
傍にいた看護師の岡田麻奈美さえも、驚きの表情を浮かべ、青木岑を見つめ、まるで信じられないという顔をしていた。
寺田徹の悪意のある言葉に対して、青木岑はそれほど悲しみを感じなかったが、ただ少し胸が痛んだ。
こんな下品な言葉が、普段は温厚に見えた男の口から出るなんて……
青木岑は失望した目で寺田徹を見つめ、ゆっくりと口を開いた。「徹、誰にだって過去はあるわ。それは過去のことよ、私と西尾聡雄は……」
「黙れ!そのクソ元カレの話はもうたくさんだ。吐き気がする。あいつが何だって?ボロいアウディR8に乗ってるだけで偉そうにしやがって。好きならそいつのところに戻ればいい。もう俺のところには来るな。」
「徹、今はまだ冷静になれていないのね。怒っているのは分かるわ。人は怒っているときには本心じゃない決断をすることが多いの。こうしましょう。あなたがよく冷静になってから、また話し合いましょう。」
そう言い終えると、青木岑は立ち去った……
寺田徹は心が乱れていた……
彼は青木岑を三年間追い続け、当時は医学部全体で話題になったほどだった。確かに彼女を愛していた。
しかし、自分の婚約者にそんな不名誉な過去があったことを受け入れることができなかった。
しかも、その元カレが挑発的に、昨日も彼女にキスしたと言ってきたのだ。
付き合っていた長い間、一度も一緒に寝たことがなかったのに、今になってこんなことを知らされて、心が穏やかではいられるはずがない。
「寺田先生、意外でしたね。青木さんがそんな軽い女だったなんて、本当に残念です。」岡田麻奈美は小声で呟いた。
「何が残念なんだ?」寺田徹は眉をしかめた。
「こんなに素敵な寺田先生がもったいないってことですよ。うちの病院の看護師たちの間でも、寺田先生は優秀だって評判なんです。」岡田麻奈美はそう言いながら、色っぽい目つきで笑った。
寺田徹は口元を歪めた……
実際、寺田徹は容姿端麗で、韓国ドラマの主演俳優のような清秀な顔立ちをしていた。この大病院では、主治医のほとんどが四十代以上の中高年男性で、若い医師は珍しく、自然と人気があった。
以前にも看護師から告白されたことがあったが、心には青木岑しかいなかったし、二人で家も買って結婚の準備をしていたので、他のことは考えもしなかった。
今回のことがあって、本当によく考え直さなければならなくなった……
「そうなの?僕はそんなに人気があるの?」寺田徹は笑みを浮かべた。
「もちろんです。」
岡田麻奈美がそう答えた瞬間、寺田徹は突然顔を近づけ、彼女の唇に迫りながら尋ねた。「じゃあ……君もそう思う?」
岡田麻奈美は目が三日月のように細くなるほど笑いながら、挑発的に答えた。「どうでしょうね?」
眼科診察室で、寺田徹は看護師さんと軽い調子で戯れていた……
一方、産婦人科では、青木岑は仕事に集中できず、心ここにあらずという様子で、完全に上の空だった。
「青木さん、何度呼んでも返事がないじゃないの?」看護師長が怒った声で呼びかけた。