第12章：真実

「はっきりと答えてください。あるのかないのか、それだけでいいんです。答えが欲しいんです。」

西尾聡雄の表情は恐ろしいほど冷たかった……

「西尾、あの時は私たちもあなたのためを思ってやったのよ。もう過去のことだから……」西尾奥さんの言葉が終わらないうちに、西尾聡雄は素早く立ち上がった。

「やはりそうか」

母親の口調から、求めていた答えが得られた。まるで予想していたかのようだった。そう言うと、西尾聡雄は二階の寝室へ向かって歩き出した。

「西尾、食事を済ませてから休んでね」西尾奥さんは息子を心配そうに見つめながら、その背中に声をかけた。

しかし返事はなく、ただ冷たい背中を見せるだけだった……

「裕二……西尾は……まだあの死んだ女のことを忘れられないのかしら？もう何年も経つのに。やっと息子が帰国したんだから、また何か問題が起きないといいんだけど、どう思う？」息子の態度を見て、西尾奥さんは不安そうだった。

七年経って、やっと息子が帰国したのに、また昔のように一人の女のために関係がこじれることは避けたかった。

「放っておけ。もう大人なんだ。自分で判断できる。」西尾裕二は箸を取り、怒りを含んだまま食事を続けた。

西尾聡雄は部屋に戻ると、携帯を取り出し、ある番号に電話をかけた……

「一つ調べてほしいことがある。できるだけ早く」そう言うと、すぐに電話を切った。

そして、ゆっくりと鍵のかかった引き出しを開け、既に黄ばんだ写真を取り出した。

写真の中の女の子は、ポニーテールで、整った顔立ちで、笑うと可愛らしい酒窪があり、愛らしかった。

ゆったりとした制服を着ていても、その美しさは損なわれていなかった……

「岑、会いたい」

彼は低い声で呟いた。まるで魔法にかかったような声で……

記憶は写真とともに、七年前へと戻っていった……

青空、白い雲、運動場、そして……愛する彼女。

翌朝

青木岑は早朝に起き、バスで病院へ向かった。仕事を終えると、朝作っておいた骨スープを持って寺田徹を探しに行き、昨日のことを説明しようと思った。

眼科外来

青木岑が入っていくと、看護師の岡田麻奈美が慎重に寺田徹の額の傷の手当てをしているところだった。

「まあ、どうしたんですか、寺田先生。なんてお不注意なんでしょう？」看護師の甘ったるい声は、聞いていて不快だった。

「徹」青木岑はドアの所で静かに呼びかけた。

二人が振り返ると、青木岑を見た瞬間、寺田徹は無表情で、何を考えているのか分からなかった。

「あ、青木さん。じゃあ、お二人でお話しください。私は失礼します」

「待って、続けて包帯を巻いてくれ」寺田徹は突然、岡田麻奈美の手を掴んだ。

「寺田先生、その…彼女さんに包帯を巻いてもらった方が…」岡田麻奈美は気まずそうに笑った。

青木岑が何か言おうとした時、寺田徹がはっきりとした口調で言った。「彼女はもう僕の彼女じゃない」

「何を言ってるの？」青木岑は眉をひそめた。

「昨日別れたって言ってるんだ。もう君は僕の彼女じゃない。僕には高貴な君には相応しくない。だから、君の金持ちの元カレの所へ行けばいい。彼には高級車も豪邸もある。僕は貧乏な医者に過ぎない。僕と一緒にいるのは君には辛すぎる」寺田徹の言葉には、酸っぱさが滲んでいた。

「徹、今日来たのは昨日のことを説明したかったからなの」青木岑は深く息を吸い、落ち着いた様子で話し始めた。