第21章：身分

「驚いているようですね」青木重徳は微笑んで、白いシャツに黒いズボン姿で、上品で落ち着いた雰囲気を漂わせていた。

しかし、なぜか青木岑はこの人が何となく嫌いで、青木婉子や青木隼人よりもっと嫌いだった。

彼らの関係は、切っても切れない複雑なものだった……

青木岑の母、永田美世子は若い頃、三流の女優で、時代劇を専門に撮っていた。絶世の美人というわけではなかったが、清楚で愛らしかった。若さに任せて間違った道を選び、名家青木家の大相続人である青木源人の愛人の一人となった。子供を産めば正式な立場になれると思っていたが、結局母子ともに青木源人に捨てられてしまった。

青木家は青木岑という私生児の存在を一切認めていなかった……

一方、青木重徳は現在の青木家の長男で、小林紅夫人が養子として迎え入れた子供だ。虎のような夫人を後ろ盾に持ち、実子ではないものの、青木家での地位は非常に高かった。

そして青木婉子と青木隼人の兄妹は、青木源人の二番目の妻、神谷香織の子供で、非常に寵愛されていた。

神谷香織も当時は人気絶頂の女優で、多くの愛人の中から選ばれたということは、相当な手腕の持ち主だったのだろう。

現在、青木家が公に認めているのはこの三人だけで、青木岑については、青木家の関係者以外は知る由もなかった。

青木重徳は密かに何度か青木岑に会い、お金を渡そうとしたが、青木岑は受け取らなかった。

なぜなら彼女は、青木という姓以外に青木家とは何の関係もないと常に感じていたから……

あの人のことを、彼女は決して父親とは認めていなかった……

むしろ継父の原伯父の方をもっと愛していた。

「何も驚くことはありませんよ。青木坊ちゃんがこういう場所にいるのは当然でしょう。むしろ私たちのような庶民がここで遊んでいることの方が、驚かれたんじゃないですか？」青木岑は冷ややかに口角を歪めた。

「青木岑、君は私に対して……敵意を持っているようだけど、なぜだろう？私は君に悪くしたつもりはないし、それに……筋から言えば、君は私のことを兄さんと呼ぶべきなんだけど」青木重徳はグラスを手に、青木岑に近寄った。

熊谷玲子は傍らで静かに聞いているだけで、口を挟むこともできなかった。