第85章:寄り添う

「はい」青木岑は正直に答えた。

「怖くない?」西尾聡雄の声が急に優しくなり、まるで子供をあやすかのようだった。

「怖くないわ。私、医学部出身だから、遺体には慣れているの。ただ、中に横たわっているのがおばあちゃんだと思うと、どうしても悲しくなってしまうわ」

「生老病死は自然の摂理だ。誰にも変えることはできない。気を楽にしなさい」

「わかってる」

青木岑は言った後、さらに付け加えて尋ねた。「どうしてこんな遅くまで起きてるの?」

「出張から帰ってきたところだ」

「こんな遅くに?」

「ああ」

「じゃあ、きっと疲れてるでしょう。早く休んで」青木岑は静かに言った。

しかし、西尾聡雄は全く休む気配を見せず、答えた。「電話はこのままつないでおこう。僕が付き添っているから」

青木岑が断るのを恐れてか、西尾聡雄はさらに付け加えた。「こうして一緒に通夜を過ごそう」