第85章:寄り添う

「はい」青木岑は正直に答えた。

「怖くない?」西尾聡雄の声が急に優しくなり、まるで子供をあやすかのようだった。

「怖くないわ。私、医学部出身だから、遺体には慣れているの。ただ、中に横たわっているのがおばあちゃんだと思うと、どうしても悲しくなってしまうわ」

「生老病死は自然の摂理だ。誰にも変えることはできない。気を楽にしなさい」

「わかってる」

青木岑は言った後、さらに付け加えて尋ねた。「どうしてこんな遅くまで起きてるの?」

「出張から帰ってきたところだ」

「こんな遅くに?」

「ああ」

「じゃあ、きっと疲れてるでしょう。早く休んで」青木岑は静かに言った。

しかし、西尾聡雄は全く休む気配を見せず、答えた。「電話はこのままつないでおこう。僕が付き添っているから」

青木岑が断るのを恐れてか、西尾聡雄はさらに付け加えた。「こうして一緒に通夜を過ごそう」

西尾聡雄の好意に対して、青木岑にはもう断る理由がなかった。彼がどんな性格なのかもよく分かっていた。

徹夜のせいか、目が少し痛くなってきて……

「うん」

長い沈黙の後、青木岑はたった一言だけ返した。そして携帯を置いた。画面には通話が続いていることが表示されていた。

ただ、二人とも話さなくなっただけ……

このような付き添いは間違いなく最も特別なものだった。実質的な意味はなかったかもしれないが、青木岑はこの悲しい夜に、もう一人ぼっちではないと感じていた……

青木岑は静かに亡くなったおばあちゃんのために紙銭を焼き、眠気もなく、夜明けまで続けた。

午前五點半、空が明るみ始めた頃。

青木重徳が黒いシャツと黒いスラックス姿で近づいてきた。手にはLVの古いスカーフを持っていた。

青木岑が何か言う前に、直接彼女の肩にかけた……

「要らないわ」

「かけておけ。おばあちゃんの形見だ。嫌でもない限り」

青木重徳がそう言うと、青木岑は断りづらくなった。そうでないと、おばあちゃんの物を嫌がっているように見えてしまう。

青木重徳は青木岑を上から下まで見て笑いながら言った。「岑、そのドレス、かなり高価そうだね」

「見間違いよ。レプリカだわ」