青木岑は頷いた……
青木重徳は微笑んで、「ほら見ろ、やっぱり岑ちゃんが一番頼りになるね。こういう時こそ人の本心が分かるものだよ」と言った。
「お兄さん、それはどういう意味?私だって祖母の通夜をしたいけど、体調が悪くて……」青木婉子は慌てて説明した。
「もういい、喧嘩はやめろ。これで決まりだ」青木源人は青木岑を複雑な表情で見つめた。
夜9時過ぎ
広い祭壇には青木岑一人だけが残されていた。両側には花輪が並び、中央には祖母の棺があり、その中に遺体が安置されていた。
明日が出棺と聞いているので、今夜は一晩通夜をしなければならない。
青木岑は医学部出身で、病院で長く働いていたため、遺体には慣れていた。
しかも身内なので、怖いとは感じなかった。
ただ、青木婉子があんなに臆病だとは思わなかった……本当に当てにならない人たちだ。