「あぁ……どいてよ」青木岑は指の隙間から西尾聡雄が立ち去る気配がないのを見て、完全に動揺していた。
「昼間からこんな風に服も着ずに廊下をうろうろするなんて、僕を誘惑するつもりじゃないのかな?」西尾聡雄は青木岑を面白そうに見つめ、その清らかな体から目を離さなかった。
「あなたが家にいないと思ったのよ。こんな時間に家にいるなんて思わなかったわ。仕事に行かなくていいの?」そう言うと、青木岑は怒って手を下ろし、西尾聡雄を指差して怒りの表情を浮かべた。
西尾聡雄は何も言わず、彼女の豊かな胸元から下へと視線を這わせた……
「変態!」
青木岑は突然全身を見られた気がして、次の瞬間、西尾聡雄を強く押しのけて、素早く寝室へ逃げ込んだ。
西尾聡雄は呆れた表情で独り言を言った。「僕は合法的な夫なのに、まったく、青木さん」
寝室内
青木岑は服を着替えた後も、ずっと寝室から出てこなかった。
もう西尾聡雄とどう向き合えばいいのか分からなかった。さっきは本当に恥ずかしすぎて……
あのバカみたいな冗談で、顔を隠すなんて、自分がどれだけ愚かだったのか。
家には二人しかいないのに、顔を隠したところで、体は丸見えだったし、しかもすぐにバレるに決まっている。
もし熊谷玲子が知ったら、きっとこう言うだろう。「まさか、あなたがIQ130の天才だったなんて信じられない。
この7年で老人性認知症レベルまで退化したんじゃない?」
一番重要なのは、青木岑は西尾聡雄が仕事に行っていると思っていたことだ。
GKの社長はとても忙しいはずなのに、なぜ昼間からぶらぶらと家にいるのか。
しかも今日は週末でもないのに……
誰か、これがどういうことなのか教えてくれないだろうか?
西尾聡雄は確かに今日会社に行くはずだったが、青木岑のことが心配で、目覚めた時に食べるものがないと困ると思った。
だから書斎でパソコンを使ってビデオ会議をし、メールで今日の書類をすべて処理することにした。
時計を見ると、もうすぐ昼だった。青木岑がそろそろ目覚めるだろうと思い、書斎から出てきた。
しかし、こんな艶やかな光景に出くわすとは……
7年前、確かに二人は関係を持ったが、その時は若気の至りで、特に良い思い出は残っていない。
しかも二人とも成人で、結婚証明書ももらってるのに、まだ一緒に寝たことがなかった。