第88章：パンチラ

西尾聡雄は淡々と言った。「ガレージに残っている黒い車はこれだけだ」

「……」青木岑は再び無言になった。お金持ちは本当にわがままだ。

西尾聡雄は直接御苑まで車を走らせ、青木岑は階段を上がると、突然帰属感を感じた。

外でどんなに忙しくて疲れていても、ある場所に戻ると心が落ち着くような感覚だった。

おそらく慣れからか、あまりにも疲れていたからか、青木岑は靴を履き替えた後、ソファーで丸くなって眠ってしまった。

西尾聡雄は彼女のその姿を見て、眉をしかめ、心が痛んだ。

その後、寝室から白い毛布を持ってきて青木岑にかけた……

青木岑はうとうとと眠りに落ち、夢を見た……

夢の中で、お祖母さんは素色の青い着物を着て、寺院の入り口の石の上に座り、ハンカチを刺繍していた。

お祖母さんも裕福な家の出身で、刺繍の腕前が素晴らしかったと聞いていた。後に家族が没落し、お祖父さんと共に各地を転々とした。

その後、お祖父さんは一から事業を興し、小さな工場を持つようになり、だんだん忙しくなり、お祖母さんは一人で家で手芸をするようになった。

25年前、青木岑がまだ生まれていない頃、青木家の当主は肺がんで亡くなった。

青木祖母さんは家を出て、常に寺院に住むようになり、亡き夫の冥福を祈ると言っていた。

考えてみれば、情に深い女性だったのだろう……

青木岑はお祖母さんとほとんど会う機会がなかったが、その血のつながりのために、今でも感謝の念を持っている。

夢の中で、彼女はゆっくりとお祖母さんの元へ歩み寄り、膝に寄りかかって眠りについた……

寺院の日差しは特別に暖かく、彼女の全身を包み込み、その幸福感は言葉では表現できないほどだった。

目が覚めると、青木岑は白い毛布が掛けられているのに気づいた。竹炭繊維のもので、肌触りが滑らかだった。

西尾聡雄以外には考えられない人物だった……

充電が完了した携帯を確認すると、すでに午前11時半。この仮眠は3、4時間続いたようだ。

青木岑はお腹が空いていた。彼女は起き上がってあくびをし、その後2階のサウナルームに向かった。

2階には共用のサウナルームがあり、サウナと入浴ができ、韓国風の内装がされていた。

しかし青木岑はこれまで一度も使用したことがなかった。共用だったため、気が引けていたのだ。