第107章:来客

「申し訳ありませんが、それには興味がありません」

「復讐したくないの?彼があなたにあんなことをしたのに?」岡田麻奈美は、自分が介入したことで青木岑と寺田徹が別れることになったと思っていたので、青木岑は寺田徹を憎んでいるはずだと考えていた。

「私と寺田徹は円満に別れました。愛も憎しみもありません。あなたの要求には応えられません。仕事がありますので、お帰りください」そう言って、青木岑は事務所の椅子に座って書類の整理を始めた。

「あなたって本当に理不尽な女ね...」岡田麻奈美は青木岑が承諾しないのを見て、彼女を睨みつけてから踵を返して立ち去った。

山田悦子は笑って言った。「因果応報ね。あの女、捨てられたみたいね。厚かましくも初めてを捧げたなんて言って。何様のつもり?愛人のくせに偉そうにしちゃって」

青木岑はこれについて特に意見を述べなかった。岡田麻奈美のことは好きではなかったが、彼女について何か言いたくもなかった。

しかし、朝に寺田徹とBMWに乗っていた女性は、やはり吉田院長の姪に違いない。だから院長の駐車スペースを使用できたのだろう。

「先輩、あなたの元カレ、やるじゃない。こんなに早く院長の令嬢を手に入れるなんて。吉田秋雪って高慢で近寄りがたいって聞いてたのに、寺田徹と付き合うなんて、目が節穴ね」

「男女の恋愛は自由でしょう」青木岑は微笑んで、この件について冷静に対応できていた。

午後、青木岑が手術室から出てきたところで、携帯電話が鳴り始めた...

電話を受けた後、青木岑はすぐに看護師長に少し休暇を申請し、急いで病院の正門へ向かった。

「寺田伯父、寺田伯母」青木岑は白髪の老夫婦を見て呼びかけた。

「岑」老夫婦は青木岑を見て、すぐに嬉しそうに笑顔になった。

「伯父さん、伯母さん、どうしていらっしゃったんですか?」

「ああ、最近お母さんの体調があまり良くないから、検査を受けさせようと思って。それに長いこと会ってなかったから、みんなに会いに来たんだ。さっき徹に電話したんだが、電源が切れてたよ」

「ああ、手術中かもしれません。忙しさが落ち着いたら連絡すると思います」

「そうそう」老人は頷いた。

寺田徹の両親はC市の管轄下にある郡部に住んでおり、バスで約三時間半の距離だった。