「夜に会いましょう」西尾聡雄は静かに言った。
青木岑は片手で赤くなった顔を隠し、慌ててドアを開けて車から降りた……
そして振り返ることなく小走りで病院へと向かった。
その後、西尾聡雄のマイバッハは向きを変えて別の方向へと走り去った。
青木岑が病院の正面玄関に着いた時、一台の銀白色のBMW730が最前列の駐車スペースにゆっくりと停まるのを見た。
青木岑は少し困惑した。この駐車スペースは吉田院長専用のはずだし、院長の車はアウディA8のはずなのに。
不思議に思っていると、車から一人の女が降りてきた。とても若く、二十代半ばくらいの様子だった。
目は小さめで眉が長く、赤い体にフィットしたワンピースを着ていて、とても目立っていた。
その女は特別美人というわけではなかったが、雰囲気は良く、裕福な家庭で育ったことが一目で分かるタイプだった。