第104章:戦慄

西尾聡雄の体の匂いをよく知らなかったら、彼女は本当に手を出すところだった……

「西尾さん、離して」彼女は少し緊張した様子で言った。

西尾聡雄は何も言わず、ただ青木岑をきつく抱きしめ、彼女の耳元に顔を寄せた。重たい息遣いが、青木岑の心をくすぐり、濃厚なアルコールの匂いが空気に漂っていた……

青木岑は眉をしかめた……

「お酒を飲んだの?」と彼女は尋ねた。

西尾聡雄はまだ黙ったままだった。佐藤然と飲んで帰宅した後、ワインセラーから大切にしていたラフィーを取り出し、一人で一本を空けた。青木岑への想いは募るばかりだった。

かつての七年間、彼は一人で耐えてきた……

しかし今、青木岑が傍にいるのに、24時間も耐えられない。人が一番怖れるのは、習慣になることだ。

彼女が傍にいることに慣れてしまったから、一瞬の孤独さえ耐えられなくなった。