第167章：心を通わせる

青木岑は、悲しい過去の話を持ち出せば、母親がまた冷たい顔をするだろうと思っていた。

しかし意外な結果に、永田美世子は唇を尖らせて言った。「もうあんなに長く死んでるのに、何を言い出すの。今日は楽しく、みんなで美味しく食べましょう。」

永田美世子がそう言ったので、他の三人の伯母さんたちも何も言わなくなった。

食事中、青木岑がご飯のおかわりを取りに台所へ行くと、原幸治がこっそりと後を追ってきた。

「姉さん、あのおばさんたちの話を気にしないで。あの人たちはそういう人たちだから、噂話が大好きなの。」

「わかってるわ、気にしてないから。」

「そう、それならいいけど。姉さん、最近あまり忙しくないみたいだね？」原幸治は姉を見つめながら尋ねた。

「うん、病院から三日間の休みをもらったから、ちょっとゆっくりできてるの。」

「それはいいね。明日仕事じゃないなら、今夜は家に泊まっていかない？もう随分長く家に泊まってないでしょう？」原幸治は懇願するような目で見つめた。彼は姉が大好きで、小さい頃は庭の古木の下で隠れんぼをして遊び、疲れると古木に寄りかかって眠ってしまい、姉がグリム童話を聞かせてくれたものだった。

姉は天才だった。あの分厚いグリム童話を、原幸治は文字も全部読めなかったのに、姉は暗唱できたのだ。

彼はずっと姉を最大の誇りに思っていた。

たとえ姉のせいで実父の原則明が亡くなったとしても、彼は姉を責めたことはなかった。

そして青木岑も弟のことを優しい男性だと思っていた。笑顔が明るく、のんびりとしていて、彼女は弟を守りたいと思っていた。

特に原伯父が亡くなってからは、幸治に少しの辛い思いもさせたくなかった。

「うん。」原幸治の要望に、青木岑は少し考えてから頷いて承諾した。

「やった！最高だ。」原幸治は嬉しくて仕方がなかった。

食事が終わり、伯母さんたちが帰った後、青木岑は母親の後ろについて食器を片付けた。

皿を洗いながら、彼女は小声で言った。「お母さん、この前小林紅が私を訪ねてきたの。戻りたくないかって聞かれたわ。」

「あの人があなたを訪ねてくるなんて、いいことなんかあるはずないわ。」

「青木家の内紛のことよ。大房と二房の争いがもう白熱化してるって。」