第202章:氷山

西尾聡雄は車を路肩に停め、降りた。

中尾布衣は運転が下手で、焦っていたのかもしれない。西尾聡雄に一言言いたくて追いかけようとして、慌てて追突してしまった。

「西尾社長でいらっしゃいますよね?」中尾布衣は車から降りて、謙虚な態度で尋ねた。

西尾聡雄は彼女を一瞥し、自分の愛車を見て眉をひそめた。「お前が追突したのか」

「申し訳ありません。わざとではないんです。ただお話ししたいことがあって…」

西尾聡雄は彼女を見て、不思議そうな表情を浮かべた…

実は彼は中尾布衣本人だと気付かなかった。カメラの前では濃いメイクをしているからだ。

本人はテレビで見るのとは少し違っていた…

「私を知っているのか?」

「西尾社長、私、中尾布衣です」

「用件は?」西尾聡雄は冷たい表情を浮かべた。