第216章:一緒に行く

「お父さんが昨夜、心臓発作を起こして入院したの。第一病院のVIP病室にいるわ。会いに来てくれない?お父さんがあなたに会いたがってるの」

「私は忙しいから、もう切るわ」そう言って、青木岑は素早く電話を切った。

青木源人が病気になったって?私に何の関係があるの?孝行息子たちがたくさんいるじゃない。青木重徳も、青木隼人も、それに青木婉子もいるわ。

自分が行っても無駄なだけ。それに、彼は私の存在を認めたことなんて一度もない。なのに、なぜ自分から恥をかきに行かなければならないの?

一体どんな立場で行けばいいの?本当に馬鹿げている……

電話を切った後、青木岑は不思議と家に帰ることにした。途中で果物や野菜、牛肉を買って。

彼女が家に着いたとき、永田美世子は近所の伯母さんたちと麻雀をしていて、雰囲気は和やかだった。

「あら、岑ちゃん、お帰り」みんな笑顔で挨拶した。

青木岑は微笑んで、そのまま家に入って昼食の準備を始めた。

昼時、家には母と二人だけになった時、彼女は少し躊躇してから口を開いた。「お母さん、今日、青木隼人から電話があったの。神谷香織の息子よ。青木源人が心臓発作で入院して、私に会いたがってるって。でも私は行かないわ。きっと多くの人が私のことを不孝者だって言うでしょう。実の父親の生死も気にかけないって。でも、お母さんを悲しませたくないの。私にとって、この世で残された家族はお母さんと幸治だけなの。あなたたちを悲しませたくないわ」

青木岑の言葉に、永田美世子は心を動かされたようだった……

彼女はしばらく黙って食事を続けた。食事が終わってから、突然言い出した。「支度して。一緒に病院に行きましょう。会いに行くわ」

青木岑は母の反応を予想していなかったようで、少し驚いた様子だった……

「お母さん……?」青木岑は何か諭そうとしたようだった。

「私にはわかっているわ。一緒に来なさい」

その後、青木岑は食器を片付け、母と一緒に第一病院へ向かった。

タクシーの中で、青木岑はずっと黙っていた。母がどんな気持ちで会いに行くのか分からなかった。

病気になったことで心が和らいで、昔の恨みを水に流そうとしているのか?

それとも、病気になって報いを受けたと思って、気が晴れたから、嘲りに行くのか?