第276章:桑原様の気分が乗らない(3)

青木岑と西尾聡雄は、ここで原幸治に会えるとは思ってもみなかった……

原幸治は女子の同級生と来ていた。その子は恥ずかしがり屋で、眼鏡をかけていて、特に綺麗というわけではなかった。

「あの……幸治、どうしてここに?」と青木岑は尋ねた。

「同級生と映画を見に来たんだ。グループ割引で買ったチケットなんだ」

「あぁ……」青木岑は少し気まずそうだった。

「姉さん、こちらは僕の同級生の黒田恵理子だよ」と原幸治が紹介した。

そして「こちらは僕の姉の青木岑」と続けた。

さらに西尾聡雄を見ながら「こちらは姉の彼氏」と言い添えた。

「お姉さん、お義兄さん、こんにちは」黒田恵理子は恥ずかしそうに挨拶した。

西尾聡雄は軽く頷いて挨拶を返した……

青木岑は非常に申し訳なく思った。こんなことになるなら、最初から幸治に正直に話しておけばよかった。

「あ、こんにちは」

「姉さん、どの回を見るの?」原幸治は姉が西尾聡雄と一緒にいることを気にしていないようだった。

「不思議の森よ」

「僕たちも同じだよ。一緒に見ない?」原幸治は嬉しそうだった。

「いいわ、あなたたちで見てきて」青木岑は婉曲に断った。

しかし西尾聡雄は「一緒に行こう。どうせVIPルームにはソファが空いているから」と言った。

「本当?それは良かった。VIPルームなんて、ラッキーだね」原幸治は笑顔で言った。

結局、四人で映画館に入った……

広々としたソファに別々に座り、女の子は緊張した様子で、時々原幸治の袖を引っ張って何かを小声で話していた。

一方、西尾聡雄は常に青木岑の腰に手を回していたが、義理の弟の前でこれ以上親密な行動を取るのは控えめにしていた。

ぎこちない雰囲気のまま映画を見終え、四人は一緒に出てきた。

「姉さん、お腹すいてない?何か一緒に食べない?」

「いいわ」青木岑はすぐに断った。この雰囲気は本当に気まずかった。

彼女は幸治に西尾聡雄との関係を隠していたし、幸治も彼女に学校で早恋していることを隠していた。なんてことだ。

「もう遅いし、私たちは帰るわ。また今度機会があったら一緒に」西尾聡雄は丁寧に言った。

「分かりました。西尾兄、じゃあ先に行きます。気をつけて」