青木岑と西尾聡雄は、ここで原幸治に会えるとは思ってもみなかった……
原幸治は女子の同級生と来ていた。その子は恥ずかしがり屋で、眼鏡をかけていて、特に綺麗というわけではなかった。
「あの……幸治、どうしてここに?」と青木岑は尋ねた。
「同級生と映画を見に来たんだ。グループ割引で買ったチケットなんだ」
「あぁ……」青木岑は少し気まずそうだった。
「姉さん、こちらは僕の同級生の黒田恵理子だよ」と原幸治が紹介した。
そして「こちらは僕の姉の青木岑」と続けた。
さらに西尾聡雄を見ながら「こちらは姉の彼氏」と言い添えた。
「お姉さん、お義兄さん、こんにちは」黒田恵理子は恥ずかしそうに挨拶した。
西尾聡雄は軽く頷いて挨拶を返した……
青木岑は非常に申し訳なく思った。こんなことになるなら、最初から幸治に正直に話しておけばよかった。