第285章:そんなに怖いの、お母さん知ってる?(2)

「プッ……誰のバカがそんなこと言ったの?教えてよ、殺さないから約束する」

青木岑は思った。吉田院長はなんて正直な人なのに、なぜ悪く言われなければならないのか……

「そんな話、他の人は信じるかもしれないけど、私は信じないわ。だって……私が南区に来たばかりの頃、出世のために吉田院長を誘惑しようとしたけど、失敗どころか、クビになりかけたのよ」

「はぁ……随分と大胆なことをしたのね」

「仕方なかったの。当時、子供が病気で、お金が必要だったの。私も焦っていたわ。後で院長が事情を知って、病院を代表して援助してくれて、権威のある専門医も紹介してくれた。すべてに感謝しているわ。だから今でも南区で働き続けられているのよ」細川玲子は話しながら、少し詰まった。

「うん、吉田院長は正直な人だけど、厳しすぎて、みんな怖がってるわ」