熊谷玲子:彼?冗談でしょ。タダでもいらないわ。
青木岑:考えすぎよ。相手だってタダであげるわけないでしょ。昨日、佐藤然と食事したんだけど、彼、彼女連れてきてたの。その子、結構可愛かったわ。小柄で愛らしくて、ちょっと甘えん坊なところがあるけど。
熊谷玲子:え?彼、もう彼女いるの?世紀の驚きね。あんな口の悪い人のどこが女の子に好かれるのよ?
青木岑:あはは、あなただって口が悪いのに彼氏いるじゃない。人のことは言えないでしょ。お上が火をつけていいのに、庶民は灯りもつけちゃいけないってこと?
熊谷玲子:じゃあ急がないと。絶対佐藤然が結婚する前に結婚しなきゃ。でないと笑われちゃうわ。
青木岑:玲子、この何年か、本当に佐藤然のこと、少しも好きじゃなかったの?学生の頃、二人仲良さそうだったのに。どうして最後うまくいかなかったの?
熊谷玲子:佐藤然にはその福分がなかったのよ、ふん。
青木岑は微笑んで、それ以上何も言わなかった。佐藤然と熊谷玲子の昔の一件については、七年前、彼女が西尾聡雄と付き合い始めた頃のことだった。西尾聡雄の親友と青木岑の親友として、佐藤然と熊谷玲子は自然と顔を合わせる機会が多くなり、一時期、二人の間に微妙な変化が生まれた。しかし、なぜかそれは立ち消えになってしまった。当事者たちが口を開かない以上、青木岑も聞かなかった。今、熊谷玲子と佐藤然がそれぞれ恋人を見つけたのを見て、少し残念に思う。
実は彼女はずっと、二人は相性がいいと思っていた……
青木岑は退屈そうにSNSをスクロールしていると、幸治が面白い投稿をしているのを見つけた。
すぐにシェアした。そこには:「父親が初めて娘に彼氏ができたと聞いた時の気持ちは、農家のおじさんが一生懸命育てた白菜をブタに荒らされたような気分だそうだ。一方、息子に彼女ができたと聞いた時は、二十年以上かけて育てたブタがようやく白菜を荒らせるようになったような気分だとか。」
下にはブタちゃんが白菜を食べているイラストが添えられていた……
投稿してから1分も経たないうちに、すぐにいくつものコメントが付いた。
熊谷玲子:ははは、笑い死ぬわ、センスあるわね。
原幸治:姉さん、次は僕の投稿をパクる前に、いいね!くらいしてよ。