「そうですね、直接社長に聞いた方がいいと思います。ご存知の通り、社長は気難しい方なので、私が直接お答えしてしまうと、間違ったことを言ってしまった場合、仕事を失うかもしれません。笹井監督、ご理解いただけますでしょうか」永田さんは馬鹿ではないので、笹井春奈の罠に簡単には引っかからなかった。
笹井春奈は表情を少し変え、そして微笑んで「そうですね、では時間があるときに西尾社長に直接聞いてみます」と言った。
永田さんから情報を得られないと分かった笹井春奈は、諦めて立ち上がり、その場を去った……
永田さんはGKに来てから、社長の抜擢にとても感謝していた。社長は少し変わった性格で、少し風変わりではあったが。
しかし、部下に対して本当に良くしてくれて、待遇なども多くの人が羨むほどだった。
だから、たとえ会長や社長夫人が来ても、何も話すつもりはなかった。
社長に忠実であることは、彼の信念であり、人として二心を持つべきではないと考えていた。
青木岑は南区で仕事を終えた時、珍しく気分が良かったので、買い物に行って季節の変わり目の靴などを買おうと思った。
イオンモールで、青木岑は白いバッグを背負い、深いグレーのスポーツウェアを着ていた。服にはかわいいトトロの模様があり、一気に若く見え、まるで大學に入学したばかりの学生のようだった。
一通り見て回って少し疲れ、何も買えなかったので、最後にスターバックスでコーヒーを飲むことにした。
青木岑が入店すると、すぐに見覚えのある二人の姿が目に入った……
もし間違いでなければ、それは……寺田徹と岡田麻奈美?
なぜ二人が一緒にいるの?
その時、寺田徹が何気なく顔を上げ、青木岑を見かけた時、彼の目も驚きの色を見せた。
岡田麻奈美は寺田徹の反応に気づき、振り返って見た後、青木岑に向かって嘲笑うように笑った。
青木岑は彼らに挨拶するつもりはなかった……
ただ自分の席を見つけて座り、アイスモカを注文した。
しかし寺田徹は落ち着かない様子で、立ち上がって近づいてきた。「岑、一人?」
青木岑は頷くだけで、何も言わなかった……
「この前のことは、まだちゃんとお礼を言えていなくて、時間があったら食事でもご馳走させてください」
「結構です」青木岑の声は冷たかった。