第315章:今度は大変なことになった(7)

「お姉さん、よく聞けるわね?」青木岑も呆れ果てた。

「私が覚えているのは、長田とかいう男が私に薬を盛って、頭がクラクラして、あなたにLINEを送って、その後のことは覚えていないわ。あ、そうそう、その前にそこで青木婉子を見かけたわ。まあ、あの格好、羽はたきみたいで笑っちゃったわ」

「お姉さん、人のことを笑っている場合じゃないでしょう。レイプされそうになったのよ、分かる?」

「されそうになったってことは、されなかったってことでしょ?へへへ、きっとあなたが間に合ったのね?」

「当たり前よ。私が行かなかったら、終わりだったわよ」

「ハハハ、あなたが来てくれると分かってたわ。西尾聡雄と一緒に行ったの?あんなクズどもが西尾聡雄を見たら驚いただろうね。一瞬で粉砕されちゃうもんね。あの場面、最高だったでしょうね。見られなかったのが残念」

青木岑は一瞬黙って、こう言った。「あのクズな彼氏のことは忘れなさい。早く別れて、関わらないほうがいいわ」

「当然でしょ。言われなくても分かってるわ。会ったら、まずボコボコにしてから別れてやるわ」

自分の彼氏のことを考えると、熊谷玲子も呆れ果てた。大事な時に裏切るなんて、本当に男じゃない。

あの長田という男にレイプされそうになって、青木岑が来てくれて本当に良かった。

青木岑は昨夜のことについて、多くを語りたくなかった。熊谷玲子に精神的な負担をかけたくなかったからだ。

過ぎたことは過ぎたこと。起こらなかったことが、一番良かったのだ。

電話を切った後、青木岑は仕事に戻った……

青木岑の昨夜の出来事は、すでに上流社会で密かに噂になっていた。多くの人がこの女豪傑の姿を一目見たがっていた。

さらにあの血なまぐさい場面も見たがっていた。

噂によると、長田輝明は第一病院のVIP病室で療養中で、家族が交代で付き添い、多くのボディーガードも雇っているという。

彼は今回、一人の女に本当に死ぬほど怖い思いをさせられた……

山田悦子はいつもゴシップ好きな看護師で、昼休みを利用して、こっそり青木岑にLINEを送った。

「先輩、ちょっと来て」

「何?」

「今日うちのVIP病室に、お坊ちゃまが入院したの。炭鉱王の息子らしいわ」

「ふーん」青木岑は冷静に返事した。

「どうやって入院することになったか知ってる?」

「知らないわ」