「ああ、玲子が外で遊んでて、酔っ払ってるから、迎えに行ってくるわ」
「こんな遅くに、一人でクラブに迎えに行くなんて、安全だと思うの?」西尾聡雄の声は冷たかった。
いつもと違う態度……
青木岑は何か様子がおかしいと感じた。
「あ……大丈夫よ、私は酔ってないし、それに無事に帰ってきたでしょう?」青木岑は笑みを浮かべた。
西尾聡雄はそれ以上何も言わなかったが、表情は終始冷ややかだった……
「お腹すいてない?夜食作ろうか?」
「いらない、もう食べた」
「じゃあ、お風呂の準備をしようか?」青木岑は後ろめたそうに尋ねた。
「先に寝ていろ、仕事がある」そう言うと、西尾聡雄は階段を上がり、書斎に入った。
バタンという音と共に、書斎のドアが普段より強く閉められた。
青木岑は首を傾げた。「うちの西尾様、生理でも来たのかしら?今日はなんだか様子が変だわ」
不思議に思いながらも、深く考えなかった。青木岑は先ほどの出来事を西尾聡雄に話すつもりは全くなかった。
もし西尾聡雄が、彼女が一人で二十人以上の男たちと対峙し、命を賭けたことを知ったら。
西尾聡雄は発狂するだろう。彼が彼女の身の安全をどれほど気にかけているか、彼女は知っていた。
以前、彼が彼女に巨額の保険をかけたことからも分かる。
青木岑はその後シャワーを浴び、布団に潜り込んだ……
長い間待っても西尾聡雄が寝室に戻って来ないので、結局一人でうとうとと眠りについた。
書斎にて
西尾聡雄はノートパソコンの前に座っていたが、仕事をする気配は全くなかった。
彼は隣市で会議中で、夜通しの緊急会議の予定だった。
GKの隣市での不動産投資が、地方政府の新政策により変更を余儀なくされていた。
投資した数十億円が無駄にならないよう、西尾聡雄は現場視察に行かざるを得なかった。
そして幹部たちとエンジニアを集めて夜通しの会議を開いていた。
しかし真夜中に突然一本の動画が送られてきた……
それはリックからのもので、リックと西尾聡雄は友人だが、付き合いは少なかった。
通常、特別な用件がない限り、リックが西尾聡雄に連絡することはなかった。お互いの立場があまりにも特殊すぎたからだ。
誰も知らないが、かつて西尾聡雄がアメリカにいた頃、リックやリック財閥とただならぬ関係を持っていた。