青木岑の言葉を聞いて、西尾聡雄はようやく足を止めた……
「あなた、ちょっとやり過ぎじゃない?」青木岑は頬を膨らませて怒って尋ねた。
「それは私が言うべき言葉じゃないのか?」西尾聡雄は振り返り、青木岑を見つめた。
「お願い……そんな回りくどい言い方はやめて、言いたいことがあるならはっきり言ってよ。私たち、こんな気まずい雰囲気でいるのはおかしいでしょう?」
青木岑は西尾聡雄に無視されるのが本当に嫌だった。その感覚は本当に不快だった。
西尾聡雄は彼女がそこまで言うのを見て、体を向け直し、階段を降りた。
一歩一歩青木岑の前まで歩み寄り、彼女と向かい合って3秒間見つめ合った。
「わかった。もう一度聞くが、昨夜お前はいったいどこに行って、何があったんだ?よく考えて答えろ。」
西尾聡雄が再び昨夜のことを持ち出すのを聞いて、青木岑は胸に嫌な予感が走った。
特に西尾聡雄の自分を見る目つきがあまりにも鋭かったので、青木岑は、彼がもう知っているのではないかと思った。
そこで試すように言った。「昨夜のことは、私も望んでいなかったの。」
「でも、起きてしまったことは事実だろう?」
「玲子が話したの?」青木岑は思った。熊谷玲子以外に西尾聡雄に話すはずの人はいないはずだと。
「そんな必要はない。私には自分で知る方法がある。しかし、そんな大事なことを私に話さないなんて、お前は本当に私を夫だと思っているのか?それとも、家の置物程度にしか思っていないのか?」
西尾聡雄の言葉を聞くと、本当に怒っているようだった……
彼が一番腹を立てているのは、青木岑がいつも勝手に判断して、物事を隠すことだった。
彼はあれほど彼女を心配しているのに、彼女は何も話そうとしない。
やはり、西尾聡雄は全て知っていたのだ。青木岑は唇を噛みながら、少し考えた。
最後には全てを打ち明けることにした。彼女は西尾聡雄の手を引いて、ソファーに座らせた。
そして昨夜の出来事を簡単に説明した。もちろん、かなり省略した形で。
しかし彼女が知らないのは、西尾聡雄は動画まで見ていて、何が起きたか知らないはずがないということだった。
「事情はそういうことよ。あなたが心配するといけないから言わなかっただけで……それに、私は無事に帰ってきたでしょう?」