第318章：今度は大変なことになった（10）

「何が真相よ」青木岑は熊谷玲子に本当のことを話すつもりはなく、知らないふりをして聞き返した。

「多田広が全部話してくれたわ……」

「ああ、彼が話したの？実は大したことないわ。私たち二人とも無事だったし」

青木岑は軽く微笑み、気楽な口調で……

「馬鹿野郎！あんた、バカなの？命を落としかけたのよ、分かってる？」

熊谷玲子はもう我慢できず、わーっと泣き出した……

「そんなに深刻じゃないわ。あのクズを脅かすためだけよ。本当に人を殺すつもりなんてなかったわ。殺人は命で償うものだし」

「嘘つけ！私を騙さないで。あなたがどんな人か、私が分からないと思う？」

熊谷玲子は号泣し、化粧も崩れ、黒いクマができて通行人の注目を集めていた……

「何見てんのよ！どっか行きなさいよ！」通行人たちを見て、熊谷玲子は怒鳴った。

「お姉さん、もう泣かないで。私はまだ生きてるでしょう？それに、あんなに必死な様子を見せなかったら、どうやってあなたを危険から救い出せたと思う？あの人たちだってバカじゃないでしょう？」

「この青木岑！無事で良かったわ。もし本当に何かあったら、西尾聡雄は私を八つ裂きにして、五馬分尸にして、バラバラにして、油で揚げて、刀山に投げ込んで……」熊谷玲子は想像するのも怖かった。いつも妻を溺愛している西尾聡雄が、青木岑が危険な目に遭いそうになったと知ったらどんな気持ちになるか。

「何も起こらなかったじゃない。私って運が良いのよ」青木岑は笑って言った。

「多田広のクズが私に言ってきたわ。私たち二人で逃げろって。周家が報復してくるからって」

「逃げるのはやめましょう。向こうが本気で殺そうと思えば、どこに逃げても安全じゃないわ。それに……一番危険な場所が一番安全な場所だと思うの」青木岑は冷静に分析した。

「逃げる必要なんてないわ。あなたには西尾様がいるんだから、誰があなたに手出しできるっていうの？でも気をつけてね、通勤の時は特に」

「うん、気をつけるわ。あなたも両親に一時的に避難してもらって、旅行にでも行ってもらったら？」

「うん、手配するわ」

電話を切る直前、熊谷玲子は真剣な口調で言った。「岑、あなたが私のためにしてくれたこと、全部心に刻んでるわ。もし何かあったら、この命だってあなたのものよ」