第320章:彼女の旦那様はBOSS(2)

「あの……寒さで凍えているのかもしれません。秋になって、少し涼しくなってきましたから」青木岑は小声で答えた。

西尾聡雄は心配そうにソファーの毛布を取って彼女に掛け、キッチンに行って生姜湯を作った。

温かい生姜湯を手に持ちながら、青木岑の口元に得意げな笑みが浮かんだ。

やっぱり、西尾聡雄がどんなに賢くても、少し弱みを見せれば、すぐに慌ててしまう……

本当に具合が悪いのか、演技なのか、見抜けないなんて……

翌日、青木岑が出勤して朝のミーティングが終わった後、坂本副院長が彼女を呼び止めた。

「何でしょうか、坂本副院長?」

「青木さん、南区で最近優秀職員の選考があって、あなたを推薦したんだ。吉田院長の承認が下りれば、すぐに四十万円の賞金を支給するよ」

「結構です、坂本副院長。私はそれほど優秀だとは思っていません。ただ自分の仕事をしているだけです」青木岑は目立つことを望まず、優秀職員の賞を争うつもりもなかった。正直なところ、自分がそれほど優秀だとは思っていなかった。