桑原勝は一言も発さず、顔を曇らせたまま外へ歩き出した……
関口遥と矢野川たちも、おろそかにはできず、後を追った。
「寝に帰るから、ついて来なくていい」
この一言を言い残すと、桑原勝は黒のランボーに乗り込み、走り去った。
残された関口遥と矢野川の二人は首を傾げた……
「岩本奈義が去ったから、寝床相手がいなくなったのかな?」関口遥は推測した。
「違うよ、岩本奈義は彼が無理やり送り出したんだぞ。あの子が行きたくなかったの見なかったのか?行く時は目が赤くなって、顔中に不満げな表情を浮かべていたじゃないか」
「じゃあ、どうしたんだろう?桑原様は最近禁欲でもしてるのか?僧侶にでもなるつもり?世の中に見切りをつけたのか?」
「違う、彼は変わり者に目をつけたんだ」関口遥は笑った。
矢野川は首を傾げたまま……
スピードを上げて私邸に到着し、シャワーを浴びた後、桑原勝は携帯を手に取った。
「あちらを見張っておけ。もし動きがあれば、すぐに止めろ」
「はい、若様」
桑原勝は周家が報復するという話を聞いて、青木岑に何かあるのを心配し、すぐに周家を監視する命令を出した。
その後ベッドに横たわり、スマートフォンのアルバムを開いて、あの盗撮した写真を見つめると、その眼差しは優しくなった……
「南区での療養生活が本当に懐かしいな」桑原勝は独り言を呟きながら笑った。
青木岑は早番を終えると、直接車で大學に向かい、幸治を探した。
姉弟は大學内のレストランで適当に食事を注文し、しばらく座っていた。
「姉さん、昇進してから、そんなに忙しくなくなったみたいだね。こんなに早く帰れるなんて?」原幸治は嬉しそうにラーメンを食べながら尋ねた。
「うん、南区は病院よりも忙しくないのよ。ここは療養施設だから、向こうは救急だから、概念が違うの」
「それはいいことだね。そうすれば姉さんもゆっくり休めるし、自分の時間も増えるし」
青木岑はバッグから六万円を取り出してテーブルに置いた。
「これを持っておきなさい。今は少し稼ぎが良くなったから、あなたとお母さんにも余裕ができたわ。あなたも大きくなって、彼女もできたんだから、お金を使う機会も増えるでしょう」
「ごほんごほん……姉さん、あの子は僕の彼女じゃないよ」