「大丈夫です。ただ、荒木社長にしばらくお会いしてなくて、とても会いたかったんです」岩本奈義の声は、とても柔らかく細かった。
わざとそんな声を作っているのか、それとも本来の声がそうなのか分からない。
とにかくテレビでもいつもこんな声で、それで多くの男性ファンを魅了していた。
「桑原様は今夜もモテモテですね」
数人が冗談めかして笑ったが、桑原勝は終始無表情のままだった。
数回打った後、関口遥が提案した。「お酒でも飲みに行きませんか?まだ早いし、暇なら暇なりに」
桑原勝は腕時計を見て、まだ10時半だったので頷いた。「場所を探してくれ」
関口遥はすぐに電話をして場所を予約し、みんなで向かった。
一緒にいたのは、桑原勝とそれほど親しくない人たちも十数人いたが、みな同じサークルの人間だった。
通常、これらの御曹司たちは、桑原勝本人に会えることを誇りに思っていた。
こっそりSNSで自慢するほどで、お金や車なんて大したことない、C市での自慢の仕方は、桑原勝と同じ場所で遊ぶこと、これこそがステータスのシンボルだった。
岩本奈義は白いスーツを着て、シャネルのショートパンツと半袖で、とても優雅で美しかった。
個室では多くの人が彼女と写真を撮りたがり、明らかに人気が高かった……
そして彼女自身も確かにテレビよりも実物の方が綺麗な女性で、素質が良かった。
「荒木社長、会社の下半期の映画『流星蝶劍〜前世今生〜』で私、ヒロインをやりたいんです」桑原勝の機嫌が良さそうな時に、岩本奈義は甘えるように笑って言った。
「いいよ」桑原勝は頷いたが、それ以上は何も言わなかった。
「でも、リサさんが会社は綿菓子に内定していると言ってます」岩本奈義は不満そうに唇を尖らせた。
「ああ、じゃあ別の作品にしたら?どうせ会社は毎年たくさん映画を撮るんだから」桑原勝は何気なくお酒を一口飲んだ。
「嫌です。私、武侠モノのファンで、流星蝶劍この作品が大好きなんです。荒木社長……もしかして私のことを嫌いになったんですか?綿菓子に私の地位を奪われるんですか?」
桑原勝は横目で彼女を見て、少し不機嫌そうに尋ねた。「俺の周りには誰かが誰かに取って代わるなんてことは一度もなかったはずだ。俺が興味を持った女は俺の女だ。ルールを忘れたのか?」