「いやいや、あの時お前はまだ小さかったじゃないか」青木岑は笑った。
「あの時だって十代だったよ、何でもわかってたんだから」
原幸治は思いやりのある弟だった。甘やかされた男の子たちや、親に寄生する放蕩息子たちと比べると、本当に分別があった。アルバイトをして家計を助け、いつも姉を励ます温かい言葉をかけてくれた。
青木岑は、あの時弟を救うためにどんな決断をしても価値があったと感じていた。
幸治と別れた後、青木岑は西尾聡雄にLINEを送った。「仕事終わった?」
「まだ忙しいよ」青木岑からのLINEには、いつも即レスだった。
青木岑は車を走らせてGKまで向かった。最近失態が多かったので、西尾様の機嫌を取ろうと思ったのだ。
永田さんは青木岑を見かけるなり、すぐに気づいて「青木さん、どうぞお入りください」と言った。