「ママ、彼は私の好みのタイプじゃないの」
「あなた何歳なの?まだ好き嫌いなんて言ってるの?生活していく上でそんなに好きとか関係ないでしょう?時間が経てば全て家族愛になるのよ。こんな言葉を聞いたことない?結婚後の夫婦の愛情は左手と右手のようなもので、日々の生活に磨り減ってしまうものなのよ」
「そうかもしれないけど、でも私は結婚が相性だけじゃなくて、愛情があってほしいの」
娘がそう言うのを聞いて、永田美世子は不満そうな顔をしたものの、それ以上は強要しなかった。
夜、ベッドに横たわった青木岑は感慨深くSNSに投稿した。
もしいつか、あなたが結婚するなら、相性だけじゃなく、愛情があってほしい。
こんなロマンチックな投稿が、彼女の弟の幸治によって台無しにされた。
彼は下のコメント欄で「姉さん、男って学食みたいなものだよ。まずくても、遅く行けば何も残ってないからね」と書き込んだ。