第329章:金と権力の対峙(1)

「ママ、彼は私の好みのタイプじゃないの」

「あなた何歳なの?まだ好き嫌いなんて言ってるの?生活していく上でそんなに好きとか関係ないでしょう?時間が経てば全て家族愛になるのよ。こんな言葉を聞いたことない?結婚後の夫婦の愛情は左手と右手のようなもので、日々の生活に磨り減ってしまうものなのよ」

「そうかもしれないけど、でも私は結婚が相性だけじゃなくて、愛情があってほしいの」

娘がそう言うのを聞いて、永田美世子は不満そうな顔をしたものの、それ以上は強要しなかった。

夜、ベッドに横たわった青木岑は感慨深くSNSに投稿した。

もしいつか、あなたが結婚するなら、相性だけじゃなく、愛情があってほしい。

こんなロマンチックな投稿が、彼女の弟の幸治によって台無しにされた。

彼は下のコメント欄で「姉さん、男って学食みたいなものだよ。まずくても、遅く行けば何も残ってないからね」と書き込んだ。

熊谷玲子は原幸治のSNSも友達登録していたので、兄妹の会話を見ることができた。

すぐに幸治のところにコメントした。「なんかその言葉、私に向けて言ってるように聞こえるんだけど?」

「まさか、熊谷姉、そんなこと言えるわけないっすよ」

青木岑は笑いながら返信した。「二人とも私のコメント欄で盛り上がってるけど、通行料は払った?そんなに調子に乗って」

返信を見る前に、突然スマホにビデオ通話の着信が……

スマホの画面には「最愛の旦那様」という表示と、西尾聡雄のイケメン写真が表示されていた。

でも確か西尾聡雄の連絡先にそんな登録してなかったはずなのに、これはどういうこと?

不安な気持ちでビデオ通話に出て、音量を下げた。

幸い青木岑の部屋は母親の部屋から離れていたので、母が突然入ってきても大丈夫だった。

「ハロー、西尾様」青木岑は茶目っ気たっぷりに挨拶した。

「夕飯は食べた?」西尾聡雄の声はいつもと変わらず優しかった。

向こうはまだ会社にいるようで、深灰色のカジュアルシャツ一枚で、袖口のダイヤモンドが特に輝いていた。

こんな装飾品を他の人が身につけたら、成金みたいに見えるはずなのに。

でも西尾聡雄は貴族のような雰囲気を醸し出していた。やはり、服は重要じゃない、顔が一番大事なんだ。