「ごほんごほん……西尾様はさすがに先見の明がありますね」
青木岑は西尾聡雄の聡明さに感心せざるを得なかった。彼女の小細工をいつも見抜いてしまうのだ。
「何の用だ、言ってみろ」
「大したことじゃないんです。最近母が実家に戻ってきてほしいって言ってるんですけど、もう私たち結婚してるから戻るのは無理ですよね。ただ数日間帰って、母と幸治と過ごしたいなと思って」
「ああ」西尾聡雄は頷いた。
「いいんですか?」青木岑は西尾聡雄がこんなに話が分かる人だとは思っていなかった。
「ああ、数日間帰っていいよ。母さんと弟に何か買っていってやれ。金が足りないなら、経理に追加で振り込ませるから」
「ぷっ……いりません、十分ですよ。私、もうたくさんお金持ってますから」
青木岑は主に自分の給料カードを使っていた。昇進してから給料もかなり上がったからだ。