「君の番だよ、奥さん」西尾聡雄は優しく微笑んだ。青木岑は彼のこういう笑顔がいつも優しい罠のように感じるのはなぜだろう?
気が散っていたのか、力が足りなかったのか、青木岑が投げた袋は的を外してしまった。
西尾聡雄の番になると、また百発百中で、今回はスポンジ・ボブのぬいぐるみを落とした。
全て青木岑の好きなぬいぐるみだったが、彼女は本当に喜べなかった。負けそうな気がしたからだ。
あっという間に十個の袋を全て投げ終わり、西尾聡雄は五発中五発命中。
青木岑は五発中二発命中で、結果は想像通りだった……
「負けたね。だから家に帰ったら……?」西尾聡雄の言葉は途切れたが、青木岑は彼が何を言おうとしているのかよく分かっていた。
「えーと……三戦二勝でどう?」青木岑は機転を利かせて尋ねた。