第358章:桑原様の宣戦布告(10)

「なんでもないわ」西尾聡雄は瞬時に我に返った。

「なんでもないのにぼーっとしてるの?」

「ただアメリカにいた頃のことを思い出して、少し感慨深くなっただけ」

「え?もしかしてアメリカでも女の子とこうやって買い物したり、食事したりしてたの?」青木岑は嫉妬心満々で聞いた。

「いいや、アメリカでは、誰とも付き合っていなかった」西尾聡雄は断固として答えた。

「信じるわ」西尾聡雄の真剣な説明を見て、青木岑はもう彼をからかうのを止めることにした。

二人が食事を終えた後、アイスクリーム屋の前を通りかかった時、青木岑のしつこいお願いに負けて、西尾聡雄の手にはバニラアイスが一つ加わった。

青木岑はチョコレート味を買って、数口食べたが、物足りなく感じた。

「ダーリン、あなたのを一口ちょうだい」

「ダメだ、よだれが付くから」西尾聡雄はきっぱりと断った。

「ふんっ、私のことを嫌がるなんて...じゃあキスする時は嫌じゃないのに?気取ってる、気取ってる、意地悪」青木岑は唇を尖らせて怒った。

「だってキスの時は、僕のよだれは君の口の中に入るからね...当然嫌じゃない」

「西尾様、そんなに堂々と奥さんをいじめていいと思ってるの...」青木岑は、自分でも腹黒いと思っていたが、西尾聡雄は自分よりもっと腹黒いと感じた。

あの言葉は何だっけ?上には上がある?人外に人あり、天外に天ありか。

「食べさせてくれないなら、もう一つ買ってくるわ。ふんっ、羨ましがらせてやる」青木岑はそう言って、買いに行こうと振り返った。

すぐに西尾聡雄に引き止められた...

「はい、どうぞ」

「ほら見て、結局譲歩するって分かってたわ。あ、そうだ、衝動買いでアイスクリームメーカーを家に買って帰ったら大変よ。あなたの財産を全部使い果たすのが私の余生の願いなの」青木岑は冗談めかして言った。

「君に僕の財産を使い果たしてもらうのが、僕の余生の願いだよ」西尾聡雄は優しく微笑んだ。

そして、ティッシュを取り出して青木岑の口元に付いたアイスクリームのクリームを拭いてあげた...

その動作は極めて優しく、この光景がネットに流れたら、独身の人々を虐める最強の武器になるだろう。

遠くには、金メッキのフェラーリが路肩に停まっていた...