「そうよ、辞めるわ。早く承認してよ。これからは私を見なくて済むから、あなたも気が楽になるでしょう」
「私は個人的な恨みで判断したことは一度もないわ。本当に辞めるつもり?」
「はい、辞めます」平野照子は断固として答え、その口調も強気だった。
青木岑は思い出した。以前誰かが言っていた、照子という女性は非常に功利的で、病院でずっと昇進を狙っていたと。
出世のために、坂本副院長とも関係を持ったが、結局正社員になっただけだった。
前回、細川玲子が昇進し、青木岑が看護師長になった時、彼女はとても不満そうで、至る所で青木岑に対抗していた。
その後、青木岑に何度か懲らしめられ、大人しくなった……
突然の退職願いに青木岑は驚いたが、特に何も言わなかった。
「決心がついたなら、承認するわ」そう言って、青木岑は白衣のポケットからボールペンを取り出し、自分の名前を書いた。