第361章:彼女は既婚者だった(3)

「そうよ、辞めるわ。早く承認してよ。これからは私を見なくて済むから、あなたも気が楽になるでしょう」

「私は個人的な恨みで判断したことは一度もないわ。本当に辞めるつもり?」

「はい、辞めます」平野照子は断固として答え、その口調も強気だった。

青木岑は思い出した。以前誰かが言っていた、照子という女性は非常に功利的で、病院でずっと昇進を狙っていたと。

出世のために、坂本副院長とも関係を持ったが、結局正社員になっただけだった。

前回、細川玲子が昇進し、青木岑が看護師長になった時、彼女はとても不満そうで、至る所で青木岑に対抗していた。

その後、青木岑に何度か懲らしめられ、大人しくなった……

突然の退職願いに青木岑は驚いたが、特に何も言わなかった。

「決心がついたなら、承認するわ」そう言って、青木岑は白衣のポケットからボールペンを取り出し、自分の名前を書いた。