第372章:私はあなたの理性が嫌い(4)

「岑、私たち二人のことは放っておいて。あなたが思うほど単純な話じゃないから」

「えっ?二人の間に私の知らない秘密でもあるの?」青木岑は驚いたふりをした。

「いや...もちろんないよ。変な想像はしないで」

「わかったわ。とにかく伝言は済ませたから、彼を引き戻すかどうかはあなたの問題よ。ただ...小原幸恵という女の言葉は気にしないで。あの女は...単純な人じゃないわ。わざとあなたに聞かせたのかもしれない」

一通り説明した後、青木岑は安心して、支度を整えて今週三回目の夜勤に向かった。

退勤のラッシュ時だったので渋滞していて、青木岑は車の中で音楽を諦めた。

静かに運転していると、何となく誰かに見られているような気配を感じた。

案の定、信号待ちで並んでいたのは黒いランボーだった...

運転席にいたのは、桑原勝以外の誰でもなかった。

桑原勝は今回、わざと偶然を装ったわけではなかった。彼は数人の顧客と食事の約束があり、レストランはすぐ先にあった。

まさか信号待ちで青木岑に出会えるとは...本当に予想外の嬉しい出来事だった。

桑原勝の視線は青木岑から離れることはなかった...

信号が変わり、後ろの車がクラクションを鳴らすまで、彼は我に返らなかった...

その時横を見ると、青木岑はいつの間にか走り去っていた。

青木岑が南区に着いた時には、夕食の時間は過ぎていて、出前を頼むか迷っていた。

突然、看護師さんが慌ただしく近づいてきて、「坂本副院長が事務所に来るように言っていました、看護師長」と伝えた。

「わかりました」

青木岑は頷き、白衣に着替えて眼鏡をかけ、最上階の副院長室へ向かった。

ノックして入ると、思いがけず青木重徳がいた。

彼はカーキ色のTシャツを着て、左手にカルティエのブレスレットをしていた。

副院長と何か話をしているようだった...

「おや、誰が来たかな?」青木重徳は青木岑を見て、目に笑みを浮かべた。

青木岑は彼を無視して、直接坂本副院長に尋ねた。「何かご用でしょうか?」

「青木さん、ほら、座りなさい」

「副院長、まだ食事をしていないので、用件を先に教えていただけますか」

青木岑は時間を無駄にしたくないようだった...