「離婚しよう」
「無理だ、考えるな」西尾聡雄は即座に否定した。青木岑と入籍した瞬間から、離婚なんて考えたこともなかった。
「あなたの意見を聞いているわけじゃない。同意しようがしまいが、まず別居する。そして半年後に裁判所に離婚を申し立てる。それだけよ」
言い終わると、青木岑は病室に入ろうとした……
「お前……」西尾聡雄は胸が痛み、青木岑の腕を掴んだ。
「離して」青木岑の声は冷たく鋭く、普段の彼女とは全く別人のようだった。
「入ってこないで。母はまだ目覚めていないし、あなたの顔なんて見たくないはずよ」そう言って、青木岑は病室に入った。
西尾聡雄は一人で病室の前に立ち尽くし、心の奥底が刺すように痛んだ……
これは彼が最も避けたかった事態だったが、結局起きてしまった……
七年前、青木家が突然の事態に見舞われ、彼女はアメリカ行きを断念した。