第410章:第1次冷戦(10)

「離婚しよう」

「無理だ、考えるな」西尾聡雄は即座に否定した。青木岑と入籍した瞬間から、離婚なんて考えたこともなかった。

「あなたの意見を聞いているわけじゃない。同意しようがしまいが、まず別居する。そして半年後に裁判所に離婚を申し立てる。それだけよ」

言い終わると、青木岑は病室に入ろうとした……

「お前……」西尾聡雄は胸が痛み、青木岑の腕を掴んだ。

「離して」青木岑の声は冷たく鋭く、普段の彼女とは全く別人のようだった。

「入ってこないで。母はまだ目覚めていないし、あなたの顔なんて見たくないはずよ」そう言って、青木岑は病室に入った。

西尾聡雄は一人で病室の前に立ち尽くし、心の奥底が刺すように痛んだ……

これは彼が最も避けたかった事態だったが、結局起きてしまった……

七年前、青木家が突然の事態に見舞われ、彼女はアメリカ行きを断念した。

そして彼と冷たく別れた……

彼は一人でアメリカに行き、七年間帰国を拒み、祖父の葬式にも参列しなかった。

まさか今、悲劇が繰り返されるとは……

そしてこの悲劇の全ては、彼の傲慢な母親から始まった……

西尾聡雄は重い気持ちで病院を出て、一階の受付で二百万円の入院保証金を預けた。

そして車で病院を後にした……

「どこにいる?」

「警察署だよ」

「飲みに行こう」

「今?」佐藤然は首を傾げた。

「ああ、今すぐだ」

「わかった、この窃盗事件の処理が終わったら行くよ。待っててくれ」

佐藤然は急いで電話を切った……

夜になっても、母はまだ目覚める気配がなく、青木岑は醫師に相談した。

体力が弱っているため、もう少し時間がかかるかもしれないが、各種データは安定しているとのことだった。

青木岑は戻ってきたが、病室に入る勇気が出なかった。母親に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

彼女は廊下の角に立ち、手にタバコを持っていた……

それはロシアのブランドで、茶色く細いが、かなり強いものだった。

青木岑には喫煙の習慣はなかったが、タバコの香りを嗅ぐのが好きで、それは一種の癖だった。

だからいつもバッグにタバコを一箱入れており、ストレスがたまったときや疲れたときに取り出して香りを嗅いでいた。

火をつける必要もなく……