「構わないで」
青木岑は顔を背けて酒を飲み続けた。先ほど彼女があのハゲに「あなたは面倒なことになるわよ」と言ったのは、桑原勝が来たことを知っていたからではない。
この倶楽部の裏にいる人物がもうすぐ動き出すことを知っていたからだ。
彼女はその人物と西尾聡雄がどういう関係なのかは分からなかったが、必ず彼女を守ってくれるはずだった。
ただ、まさかこんな重要な時に、桑原勝が出てきて邪魔をするとは思わなかった。
「ウェイター、彼女と同じものを12本持ってきて」
桑原勝が手を振ると、ウェイターは太客の注文を聞いて、すぐさま小走りでビールを持ってきた。
桑原勝は黙ったまま、開けられたビールを手に取り、一本ずつ飲み干していった……
連続で六本飲み干した……
後ろにいた関口遥と矢野川たちは驚きのあまり失禁しそうになった……