全員が札を上げた人が桑原勝だと分かった時、誰も不思議に思わなかった。
なぜなら、この方は生まれつき大金を使うのが大好きだったからだ。
「ああ、桑原坊ちゃんが手を出したのか。なるほど...誰がそんなに太っ腹なのかと思った」
「そうね、桑原様がこのセットを買うなんて、どの愛人に贈るのかしら。羨ましいわね、ふふ」
「きっと岩本奈義でしょう。最近、彼女が寵愛を受けているって噂よ」
「とは限らないわ。私の聞いた話では、もう岩本とは付き合っていないらしいわ。新しい人に変えたって」
セレブたちが小声でひそひそと噂し合っていた......
司会者は興奮気味に「一億円です。スターキングエンタテインメントの荒木社長の入札額が一億円に達しましたが、これ以上の方はいらっしゃいますか?」
会場は水を打ったように静まり返った......
「一億円、一回目......
「一億円、二回目......
「一億円......三回目......落札!スターキングエンタテインメント桑原勝社長、おめでとうございます」
司会者の言葉が終わるや否や、会場は拍手喝采に包まれた......
西尾聡雄は何も言わず、ただ口角を上げただけだった。一億円相当のジュエリーセットが最終的に十億円で売れたのは、十分な価値があったと言える。
「お前さんは本当に金遣いが荒いな......そのジュエリーセットは一億円相当だぞ。GKの面子を立てたというか、いや、青木岑の顔を立てたというべきか」関口遥は桑原勝の金遣いの荒さに心を痛めていた。
「荒木社長、ステージにお越しいただき、ジュエリーをお受け取りください」と司会者は笑顔で言った。
桑原勝は立ち上がり、スーツの襟元を整えてからステージ中央へ歩み出た。
二人の受付嬢が慎重に青木岑からジュエリーを外した。イヤリング、ネックレス、ブレスレットだ。
それらを盆に載せ、青木岑に手渡した。
青木岑はジュエリーを桑原勝に渡し、「おめでとうございます」と言った。
桑原勝は何も言わず、ゆっくりとジュエリーを受け取り、会場を見渡して言った。「高額で落札させていただいた私からの小さなお願いですが、よろしいでしょうか?」
「どうぞ、おっしゃってください」と司会者はすぐに応じた。
「青木さんと記念写真を撮らせていただけないでしょうか」