第440章:私のことを西尾奥さんと呼んで(10)

「青木岑って誰?」青木岑は意図的に尋ねた。

西尾聡雄が近づいてきて、彼女の腰を抱き上げた……

青木岑は驚いて叫び声を上げた。「何するの?早く降ろして。」

西尾聡雄は彼女を空中で何回も回転させ、やっと降ろしてくれた……

そして彼女の唇に蜻蛉が水面に触れるような軽いキスをした。「今夜、君が一番輝いている。」

「お世辞を言わないで……」青木岑は軽く笑った。

「本気だよ……行こう。」その後、西尾聡雄は青木岑の手を取り、堂々と会社を後にした。

初めてGKの従業員の退社ラッシュ時にこんなに派手に現れ、青木岑はまだ慣れていなかった。

幸い西尾聡雄は彼女の手を握り続け、二人はそのまま派手にロビーを出て、マイバッハに乗り込んだ。

「まさか、社長が女性の手を握っているの?」

「当たり前でしょ、女性に決まってるじゃない。男性なわけないでしょ?」

「あの女性、とても綺麗ね。これは交際宣言の流れ?どこのお嬢様なんだろう?」

「そうね、社長についにお付き合いする人ができたのね。私たち、もう望みがないわ、うぅ……」

多くの女性社員が内密に噂する中、笹井春奈は良くない表情でエレベーターから出てきた。

今夜は会社のチャリティーオークションパーティーで、彼女も招待状を持っていた。自分でドレスも用意していた。

オークションで会社の一億円相当のジュエリーセットを身につけ、栄華絢爛と輝いて、社長の注目を集めようと思っていたのに、そのジュエリーセットは既に社長に持ち出されたと告げられた。

さっき見たところ、あの女性が身につけていた……心の中で何とも言えない気持ちになった。

あのジュエリーセット、自分もデザインに参加したのに、なぜ最後は他人のための嫁入り道具になってしまったのか?

以前は会社のジュエリー展示は、いつも彼女が担当していたのに……

「笹井監督、後でチャリティーパーティーにいらっしゃいますか?」アシスタントが恐る恐る尋ねた。

「行くわよ、なぜ行かないの。あのジュエリーには私の苦労と功績も入っているのよ。」言い終わると、笹井春奈は冷たい表情で出て行き、BMWで走り去った。

青木岑は初めてオークション形式のパーティーに来て、まだ慣れていなかった。人が多く、みな社交界の名士だった。

ふと見ると、見覚えのある顔があった。桑原勝だった。彼も来ていたのだ。